アンドレ・ヴェイユ著「婚姻法則の諸型についての代数的研究」の解説 山崎 隆雄 クロード・レヴィ=ストロースの著書『親族の基本構造』第十四章では、ヴェイユの筆に よってムルンギン族の婚姻体系が説明されている。このノートではその数学的な内容を解説す る。初めの章では高等学校で学ぶ程度の数学(集合と写像の概念)のみを用いてこの論説の目 標を説明し、次の章で初等的な群論(主に対称群)を利用してその目標を達成する。以下、引 用は上掲書の邦訳(馬淵東一・田島節夫監訳、番町書房)によった。ヴェイユの原論文は全集 の一巻390ページにある。(ヴェイユ予想を提出した論文と同じ年です。) 1 クラスモデルと婚姻モデル 多くの婚姻体系は次のようなモデルで説明できる。この社会にはいくつかのクラスがあり、各 個人はどれか一つのクラスに属している。あるクラスに属する男が結婚できる女のクラスはた だ一つ決まっていて、