原武史「平成は天皇制を強固にした」 奉祝ムードに染まった日本社会。国民は「平成流」を支持し、天皇の求心力は増大した 石川智也 朝日新聞記者 たったひとりの老人の引退劇が、過去を洪水のように押し流し、人々に時代の転換を強烈に印象づけるとともに、過去をよりいっそう刻みつける――この奇妙な磁場と時間軸を抱えた空間は、いったいどのようにできあがったのか。 「平成最後」との合言葉が乱舞し、天皇への感謝親愛と新時代への「期待」の声が吹き荒れたこの1カ月。喧噪から遠く引いた視点で、「象徴」と「国民」の政治的関係性を読み解いてきたのが原武史・放送大教授だ。3年前の「おことば」表明から退位特例法成立、そして代替わりに至る一連の流れに異を唱え続けてきた数少ない専門家でもある。 このところメディアに引っ張りだこだが、その発言は大方マイルドに編集されている。あらためて、この国最大の禁忌である天皇というシステムの今