古典の新訳ブームがミステリーにも及んでいる。ドイルにクイーン、カーやチェスタトン。オールタイムベスト級の作品が、次々に新しい装いをまとっているのだよ、ワトスン君。 昨年末、四半世紀ぶりに週刊文春が企画した「東西ミステリーベスト100」。海外上位10作中8作は今世紀の新訳、うち6作は2010年以降だ。『シャーロック・ホームズの冒険』のように、同時期に複数社から出る作品もある。 早川書房は10~11年、『そして誰もいなくなった』などクリスティ10作品を新訳、11年のカー『火刑法廷』のように、発売早々に版を重ねた作品も多い。 山口晶編集本部長によると、新訳は機会があるごとに出してはきた。今回、まとまった数を出版したのは、村上春樹訳『ロング・グッドバイ』(10年に文庫)が呼び水になったという。 「一般文芸だけでなく、ミステリーでも新訳効果があるとわかった。ちょうど、古典作品の電子書籍化を進めようと