歴史の中で、偉大な旅人として名を残した人々がいる。 思い浮かぶのは松尾芭蕉か西行か、人それぞれ違うことだろうが、明治時代であれば正岡子規が、旅に生きた偉人とだといえる。 俳人や歌人として活躍し、随筆や評論の世界でも手腕をふるい、近代文学に大きく貢献した正岡子規であるが、かってはただの旅行熱心な若者だった。明治二二年の春休みにも、東京都文京区から茨城県水戸市まで約一〇〇キロを徒歩で旅行している。 偉人になった若者の旅行 バンカラによる夜間遠足 勤労学生の行商旅行 偉人になった若者の旅行 明治時代の若者たちは、多かれ少なかれ無茶な旅行を好んでした。例えば明治の初めにも、断食旅行というのがブームになっている。物を食べずに名勝古跡を巡ることで、お金をかけずに知見を広げることができる上に、体も鍛えられる……これが断食旅行の効能である。断食しながら歩き続けたところで強くなれるとは思えないのだが、そこは