■現代に蘇った大山・升田の対決 第79期棋聖位決定五番勝負は、羽生善治名人・王座・王将が佐藤康光棋聖(棋王)を2連敗の後3連勝という逆転で下し、8期ぶりの棋聖位に返り咲いた。 私が観戦記を担当した新潟での第1局(6月11日)のとき2冠だった羽生は、6月17日に名人位を奪取し、いまは4冠。前人未到の「永世7冠」、そして12年ぶりの7冠も射程に入ってきた。 今年の棋聖位決定五番勝負は、ファンの期待を裏切ることなく、現代将棋を象徴する難解な名局が繰り広げられた。しかし羽生は敗れた緒戦と第2局を「ふがいない将棋」と振り返り、佐藤も敗れた第3、4局を「だらしなかった」と厳しく総括した。2人とも30代後半という頭脳スポーツ選手として難しい年齢に差し掛かっているが、この苛烈(かれつ)なまでの自己への厳しさこそが、若手を寄せつけず棋界最高峰の地位を維持しつづける2人の強さの源なのである。