『小説トリッパー』に載っていた松浦寿輝と川上弘美の対談を読んでいて、いよいよ純文学も胸突き八丁へ来たなあと思った。川上の新聞連載であるファンタジー『七夜物語』と、松浦のネズミ物語『川の光』をめぐるものだが、これはどちらもファンタジー、あるいは児童文学の類であり、一般的な純文学ではない。芥川賞作家二人が、そのことの言い訳のように、デュマやバルザックやディケンズも通俗性があったと言いあっているのだが、これは使い古されたレトリックで、久米正雄はだから、ゾラもトルストイもドストエフスキーも高級な通俗小説だと言ったのである。それなら三田誠広のように、純文学を書いても生計が成り立たないからファンタジーを書くのだと正直に言ったほうがいい。 デュマは今でも古典的通俗作家と見なされるが、まあバルザックなどの手法は、松本清張や山崎豊子、高村薫などに受け継がれているわけで、だったら川上が選考委員をしている芥川賞