荒川洋治さんから、新著『文学の空気のあるところ』を送って貰い、ぱらぱら読んでいたら、横光利一が「文学は小説ではない」と発言した、とあった。そして広津和郎がそれに応じて書いた「『文学は小説ではない』について」(『文藝懇話会』1936年1月、『文学論』筑摩叢書)が紹介されていた。しかし横光がどこで発言したか分からないので人に訊いたら、『行動』1935年11月の「横光利一文学談」という、舟橋聖一と阿部知二のインタビューのごときものであった(『定本横光利一全集』第15巻、河出)。 そこで横光は、こう言っている。 小説というものは、文学だとか藝術だとか今でも現にさう思つてゐる人が多いけれども、さう思つてゐると云ふことが既に非常な間違ひぢやないかと思ふ。僕は小説といふものは文学でも藝術でもない小説だと云ふことをはつきり思つてゐます。小説を批判する場合に藝術だとか文学だとか思つて批判するのは間違ひで、小