■ゲームボーイその2 俺は高校を卒業するまでに、学校を二回だけ休んだ。 高校時代にナイフで腹を刺されて入院したときと、中学時代に学校をさぼったときだ。 その日、学校をサボってみようと決めていた。 さしたる理由があったわけではない。 学校が好きというわけでもなかったが、格別に嫌いというわけでもなかった。たいていの十四歳が経験する、世界に対する反抗的なものだったとも思わない。 と、思っているだけで、実は単にそういうものだったのかもしれないが。 いつも通りに朝食を食べ、中学指定の学生鞄を持ち、家(例のボロ家だ)を出て、とりあえずすぐ近くにある小さな児童公園に行き、ベンチに座ってみた。そのとき公園沿いの道に、犬の散歩をしている男性の姿が見えた。 その男には見憶えがあった。アマイケという人で、公園の向かいにある自宅で学習塾を開いている。まずいことに、当時の俺はそのアマイケ塾に通っていた。 学校の先生