味の素をはじめとするうま味調味料をめぐって論争が絶えない。ライターの澁川祐子さんは「この論争は100年にわたって続いている。味の素が人気になりだした大正時代には『原料がヘビ』というデマさえ流れた」という――。 【写真】澁川祐子氏の著書『味なニッポン戦後史』(インターナショナル新書) ※本稿は、澁川祐子『味なニッポン戦後史』(インターナショナル新書)の一部を再編集したものです。 ■一世を風靡したはずの調味料が大っぴらに語られなくなった あの赤いキャップの小瓶が食卓から消えたのはいつだったのか。 記憶をたぐってみても、はっきりと思い出せない。覚えているのは、小瓶からさっとふり出される細長い結晶が醤油の小皿できらめいていた光景だ。父はいつもその結晶入りの小皿に、漬けものをちょんちょんとつけて食べていた。少なくとも1980年代初めまではあったように思うのだが、いつのまにか姿を見かけなくなった。 そ