たしか、2005年、ヒロシマ・ナガサキ60周年の時だったと思います。ニューヨークにTV JAPAN というテレビ局があり、主に日本で出来たテレビ番組を流しています。そのニュース番組で異様な場面を見たのです。国連本部の建物の中の人通りのかなりあるホールウエイのようなところで、長崎で被爆した一人の老男性が背中の左側に縦に長く深くえぐられた原爆のケロイド化した傷痕を写真パネルで示し、ご自身も背中をあらわにして、原爆被爆の凄まじさを訴え、核廃絶と世界平和を訴えておられました。そこへ一人の40歳前後の浅黒い皮膚の色の男性が立ち止まって、しばらく、被爆者の訴えを聞いていたのですが、特別反発の調子でもなく、ただ平坦な静かな声で、「あなたと同じような苦しみを味わった人間は世界には無数にいる」と言って立ち去ってゆきました。そのシーンを見て以来、私は、折りにつけて、男の言い残した言葉を反芻しています。 長崎