〈「白樺」100年・上〉セカイ系が継ぐ感覚(1/3ページ)2010年4月3日11時24分 作家の武者小路実篤や志賀直哉が参加した雑誌「白樺」が創刊され、この4月で100年になる。自由で人間を肯定する思潮は、日本人の創作や鑑賞の形を変えたといわれる。文学に限らず美術館まで建てようとしていた「白樺派」の運動は、1世紀を経た日本の芸術の状況と重なる部分も少なくない。その意味を探る。 ■今に通じる「自分探し」 「白樺」は同時代には新鮮だった。芥川龍之介は武者小路を「文壇の天窓を開け放って、爽(さわやか)な空気を入れた」と評した。 「白樺」はまず、ゆったりとしたレイアウトに短編小説を織り込み、図版を採り入れるなど、雑誌を読む面白さが工夫されていた点で清新だった。 雑誌メディアに詳しい日大の紅野謙介教授(日本近代文学)は「自由で大胆な文学を、活字やレイアウトを工夫して載せた。20代の若者が実験的な雑誌