高齢者が働き手として輝き始めた。特にモノを売る仕事で、経験に裏打ちされた接客技術を生かし最前線に立ち続ける人の存在感が増している。今どきの若者と異なり、マニュアルに頼らない臨機応変な語り口は、同世代の支持を集める。高齢者が高齢者を接客する「老老接客」。これからの日本には欠かせない。 「さあ岩手でございます。いらっしゃいませ」。8月下旬の昼下がり、東京都狛江市にあるスーパー「Odakyu OX狛江店」。男性の大声が響く。声の主は岩手など三陸地方の海産物を催事販売するマネキンの細矢毅さん(76)。この道25年だ。 軽妙な口上につられて、78歳女性が売り場に訪れた。ワカメを薦める細矢さんに女性は「我が家でワカメといえば味噌汁の具だけど塩分が多いので控えているの」と答える。「それならメカブがいいよ。納豆と合わせるとカリウムがいっぱいだから体にいいよ」と細矢さん。 女性はさらに「車いす生活の夫が喜び