(10)マンガ原稿は美術品? 第8回で、マンガ原稿の財産としての価値があるかどうかについて触れた。これまでの裁判では、製版フィルムがあれば作品の出版は可能なため、原稿に財産としての価値は認めなかった。製版フィルムではなく、コピーやスキャンしたデータや、最初にマンガが掲載された雑誌やゲラでも、結果は同じだろう。もちろんできあがった作品の「質」の問題はあり、そこで新たな争点が生まれるかもしれないが、枝葉の問題でもあるので、とりあえず置いておく。 基本的に、雑誌や単行本に使用されたマンガ原稿は、出版物が発売されれば、とりあえずは御用済みとなり、ただの紙切れとなる……というのが、これまでの常識だった。将来、再録されたり復刻されることがあるかもしれないが、それは、あくまでも可能性であり、何の確証もないものである。 だが、たとえば「天使のたまご」事件で、マンガ原稿の財産権が認められていたとしたらど