森 岡 祥 倫 MORIOKA Yoshitomo, A History of Art and Technology: progressive edition on web *この講は編集中です 「空はわたしのキャンヴァスだ」。この少年の夢想にも似た発言は、イタリアの空間派の画家ロベルト・クリッパ(1921-72年)のものである。ルチオ・フォンタナをはじめとする6人の美術家の創始による空間主義は、20世紀に出現したさまざまな芸術思潮の中でも、たしかにその評価が定まりにくい流派ではある。しかし、このクリッパはダンディッシュな曲芸飛行家としても名を馳せた人物で、その妙技を披露する最中に事故を起こして世を去るまで、画家兼飛行家という立場を処世の術のみならず表現の作法においても貫き通した。油彩画から陶画にまで手を広げるその作風は、フォンタナのような還元主義的姿勢ではなく、むしろ無法かつ即興的な抽