1 戦後日本における農村過剰労働力の移動とその特徴 張 季風 【論文要旨】 戦後直後、日本の農村過剰労働力問題は相当深刻であった。しかし、経済の高度成長に よって、この難問は短期間でうまく解決された。戦前と比べて、戦後日本における農村過 剰労働力の移動は、新しい特徴が多数あらわれた。有利な人口背景、非農業部門の労働力 吸収力の強さ、政府の積極的な誘導政策および農業部門の労働力需要の減少などの諸要素 は、農村過剰労働力の迅速な移動を促した。しかし、農地の私有化と農業経営の零細化と 総兼業化によって、農業の大規模経営が阻害された。農村過剰労働力が迅速に移転され、 農家も豊かになったが、農業が衰退したことの教訓も大きい。 キーワード:都市化 農村 農業 兼業 過剰労働力 移動 はじめに 敗戦直後の日本では、大量の復員軍人・軍人家族などの海外からの引き揚げ 者と都市部の疎開人員などが、一斉に農業