現在、各国政府は幸福度や主観的幸福感を測定しており、一部では幸福度を最大化しようという動きが始まっている。本稿は、幸福 (happiness)と効用 (utility)は同じではないことを示す最新の研究について論じる。人々が行う選択を見ると、彼らは幸福以外の望みや目標をもっていることがわかる。このため、人々の主観的幸福感 (wellbeing)が向上しても、以前より生活水準が悪化してしまう可能性もある。 昨今、幸福の心理学と経済学への関心が高まり、公共政策にも大きな影響を与えている。注目を集めたスティグリッツらによる報告書 (Stiglitz et al. 2009)はその典型例であり、幸福を主要な社会目標とし、その調査測定の拡大を明示的に進める政策を奨励している。ブータンなどの国から米国マサチューセッツ州サマービルの町まで、多くの場所で幸福度や主観的幸福感を明示的に測定し、その尺度を徐々