小石川植物園に勤務する分類学者から、薬用植物に関する知見を披露していただいた「小石川植物園に行って教授に訊いてきた『薬剤師にしか通じない話』」。 そこで聞くことのできた話題は、「薬」というトピックを取り巻いて幅広く、また歴史的に見ても興味深い史実が大いに含まれるものでした。 植物園内に残る数々の史跡の中から、今回は「小石川養生所」についてご紹介します。 「養生所」ってそもそも何? 小石川養生所は、別名「施薬院」とも呼ばれます。その名の通り「薬を施し治療する」施設ですが、歴史的に「貧しい庶民を救済する」目的を持った施設をこのように呼び、施薬院の歴史は伝承上、奈良時代にまでさかのぼります。 字義通りにとらえれば、現代で言う「薬局」に近い施設のようにも思えますが、「入院させて、治るまでいてもらう施設だった」ということです。 「井戸を取り囲むような形で母屋が建っていて、入院病棟は母屋に直角にこう連