◆手足だけでなく人間としての誇りまで奪われた男は、己の運命を呪い人生を憎む。旺盛な食欲と性欲が、死にきれなかった彼の希望なき未来を象徴する。映画は、傷痍軍人とその世話をする妻の姿を通じ、人間のエゴの正体に迫る。(70点) 手足だけでなく誇りまで戦場で奪われてしまった男は、己の運命を呪い人生を憎む。食事も排せつも一人ではできず、その苛立ちは介護する妻に向けられ、まるで何かに復讐しているかのように彼女に辛く当たる。そんな主人公の、帝国軍人として潔く散れなかった後悔よりも、芋虫のようになってでも生きようとする “生”への執念がすさまじい。旺盛な食欲と疲れを知らぬ性欲が、死ぬべき時に死ねなかった彼の希望なき未来を象徴する。物語は、軍神と祭り上げられた傷痍軍人と妻の姿を通じ、人間のエゴの正体に迫る。 この映画の批評を読む » ◆若松監督にとって戦争を描いた本作は過去の歴史をより深く総括する、ある種の