9000人が銃殺された森 シダがうっそうと茂る森のなかで、イリーナ・フリーゲはつぶやいた。彼女はNGO団体「メモリアル」のサンクトペテルブルク支部代表だ。 「誰かがここに記念碑を設置しようと決めたわけではありません。勝手に生えていったのです」 上手い比喩だった。彼女は暗がりを指差した。花が植えられていた。小さくまばらながら、そこにだけ色どりがあった。大きな松の幹にはひっそりと肖像写真が掛けられており、苔むす地面に木製の細い十字架が立っていた。その上には北ロシア式の屋根が取りつけられている。 フィンランドとの国境に位置するカレリア地方。このサンダルモフの森では、多くの人が殺された。スターリンによる「大粛清」の渦中にあった1937〜38年、サンダルモフは重要な処刑地だった。約9000人が銃殺され、236ヵ所の共同墓地に埋められた。
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