5年前に亡くなった妻の骨の一欠けらを財布に入れている。 彼女が亡くなった時、俺は激しく取り乱していてずっと泣いてたと思う。 泣き止んだ後の記憶は曖昧で、周りが色々と尽くしてくれた。 情けないことに自分は夫な癖に妻の葬式の手配すらままならなかったのだ。 ほんと、情けない話だよ。 骨上げの際、俺は妻の骨をくすねた。 周りから気付かれないようにしたつもりだがバレバレだったと思う。 それでも誰も、なにも言ってこなかった。 何処の部位の何かも分からない小さな骨の欠片。それを今も財布に入れている。 あんなに好きな人はもう二度と現れないだろうと、本気でそう思っていたのだ。 少しずつ、ようやく妻がなくなったという事実を受け止められるようになってきたのは最近のことだ。 増田もそろそろ前を向いてもいいんじゃないか?そう声をかけてくれたのは友人だった。 いつまでも後ろを向いていたら彼女もきっと悲しむだろうから。