全体主義がもたらす恐怖社会を風刺的に描いた小説『1984』(1949年発表)は、世界中の強権的な政治体制や、現代の日本の状況にも通じるところが多いと、あらためて見直されている作品だ。その作者のもう一つの代表作といえば、腐敗政治によって弱い者たちが犠牲になる社会を投影し、イギリスで長編アニメ化もされた『動物農場』(1945年)が挙げられる。そのモデルとなったのが、当時のソビエト連邦の政治体制だった。 映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』は、実在のジャーナリストが暴いたソ連の暗部を振り返り、いまふたたび、歴史的事実にスポットライトを当てていく作品だ。その真相には、『動物農場』で描かれた以上の悪夢的な悲劇が存在していた。そして、この事件こそが『動物農場』執筆の契機になったということが、劇中でも示される。 ここでは、そんな歴史の醜い真実を描こうとする強い信念が詰まった本作の内容を、じっくりと紐
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