■要旨 2025年の春闘賃上げ率が2年連続で5%台の高水準となることがほぼ確実となった背景には、賃上げ率を左右する労働需給、企業収益、物価の3要素がいずれも大きく改善していることがある。 特に強調されることが多いのは、人手不足に伴う賃金上昇圧力の高さだが、アベノミクス景気の時期も現在と同様に労働需給がひっ迫していたにもかかわらず賃上げが本格化することはなかった。この数年で大きく変化したのは物価上昇率であり、本格的な賃上げの決め手となったのは物価高と考えられる。 通常、人手不足の時には労働生産性が上昇するが、最近は人手不足感が非常に強いにもかかわらず多くの業種で労働生産性が低迷しており、人手不足感と実態的な人手不足が乖離している可能性がある。 労働需給、企業収益、物価が賃金上昇率に及ぼす影響を多変量自己回帰(VAR)モデルで推計したところ、賃金上昇率への影響が最も大きいのは物価で、企業収益、
