居並ぶシャム双生児たちと胎児の群れ――ムター博物館にて (別冊宝島『怖い話の本』) 山形浩生(取材協力:ローラ・リンドグレン) ムター博物館は、フィラデルフィアのダウンタウンのど真ん中に位置している。フィラデルフィアは、その昔かの野口英世せんせいもおべんきょーなされた由緒正しい街であり、ボストン、ニューヨークと並ぶ、いや、一時はそれを上回るほどのアメリカの医学教育の中心地の一つ。一般には、アメリカ独立がらみのいろいろなイベントがあった街としてのほうが有名だろう。 ビジネス街の高層ビルが立ち並ぶ区域と、れんが造のタウンハウスが並ぶ区域のちょうど境目、ちょっとでも経済事情が好転すれば一瞬にして再開発のターゲットになりそうなあたりだ。現にバブル期の地上げで、周辺の建物がぽつぽつと虫食い状に取り壊され、駐車場となっている。 そのなかの、ツタに覆われた古めかしいビルの一角にこの博物館はある。 地元の