ブックマーク / jtsutsui.hatenablog.com (10)

  • サンプリングについてのひとつのお話 - 社会学者の研究メモ

    世論調査などでもしばしば「層化二段無作為抽出」という言葉を目にする人は多いのではないだろうか。この手続を簡潔に説明することはなかなか難しいので、何度テキストを読んでもピンとこない、という人は意外に多いようである。その理由の一つは、「単純ランダムサンプリング(unrestricted random sampling)」を最初に説明して、それからその他の抽出法を応用として説明しようとしているからではないか、という気がする。そのせいか、一般の方の中には「母集団の正しい姿を捉えるには単純ランダム抽出が最善で、それ以外は亜流」といった考え方をしている人も多いようだ。 ところが、統計に関わる研究者のほとんどは、実際には「単純ランダム抽出は最善というよりも次善」ということを理解した上でデータを扱っている。それが一般の人には理解しにくい思考プロセスを踏まえているために、いろいろな誤解が生じているようである

    サンプリングについてのひとつのお話 - 社会学者の研究メモ
  • (非計量さん向けの)統計学の話:バイアス編 - 社会学者の研究メモ

    (今回はですます調でいく。いや行きます。) まずは、私の後輩や知人たちが書いたです。↓ エスノメソドロジー―人びとの実践から学ぶ (ワードマップ) 作者: 前田泰樹,水川喜文,岡田光弘出版社/メーカー: 新曜社発売日: 2007/08/03メディア: 単行(ソフトカバー)購入: 6人 クリック: 1,065回この商品を含むブログ (99件) を見る このなかに、次のような文章があります。 どのような研究に対しても、その主張の妥当性を、そこで採用されている方法と無関係に論じることはできません。だから、「事例の数」やそこから得られる「一般性」を問う前にまず、ある研究が明らかにしようとしていることが、そもそも事例の数によって保証される種類のものなのかどうかということ自体を考えなくてはなりません。 このことは言ってみれば「当然」のことなのですが、研究者の間ではあまり考えぬかれていない重要な論点

    (非計量さん向けの)統計学の話:バイアス編 - 社会学者の研究メモ
  • (非計量さん向けの)統計学の話:誤差編 - 社会学者の研究メモ

    今回は「誤差」編です。 誤差について説明するためには、どうしても「観察(observation)」の次元に話を差し戻す必要があります。前回に引き続いて「年収」を説明するための観察をする場面を考えます。次のように考えてください。 年収の観察値 = 性別 + 年齢 + ... + 学歴 + 様々な観察要因 最後の「様々な観察要因」ですが、いわゆる標抽出(サンプリング)による値への影響はさしあたりここに入ります。とはいえ、観察要因による観察値への影響は標抽出からのみ生じるわけではありません。というより、「センサス(全数調査)/標(部分)調査」という区別はある程度便宜的な区別なのです。 ある値(年収でもなんでも)が観察されるということは、特定の手続で、特定の時間と場所で行われたときの観察値です。観察という手続を「人」単位で考えたとき、対象「者」全員を観察することはセンサスですが、そうして観察

  • 低成長経済化における福祉国家戦略 - 社会学者の研究メモ

    以前取り上げた、 Esping-Andersen, Gosta, 1996, "After the Golden Age? Welfare State Dilemma in a Global Economy" in Gosta Esping-Andersen (ed.), Welfare States in Transition. Sage Publications. だが、かなり断片的なまとめになっていたので、ここでもう少しだけ詳しめの紹介をする。個人的な感想だが、この論文は記述が散漫で、意図を拾いにくいところがある。以下のまとめも、重要な論点を拾い損ねている部分があると思うので、その点割り引いてほしい。もちろん評価にあたってはもとの文献を読む必要がある。ここでの紹介は、あくまで参考程度に。(また、邦訳は手元にないので参考にしていない。) ※※※ 福祉国家はいま、かなり難しい局面にさしか

    低成長経済化における福祉国家戦略 - 社会学者の研究メモ
  • 各種ジェンダー関連指標のまとめ - 社会学者の研究メモ

    (文献紹介は一回スキップします。) 国際マイクロデータの普及に伴い、徐々に国別のジェンダー平等を測るための総合指標(composite index)が利用される機会も増えているように思います。総合指標はその算出方法を考慮しないと十分に生かせないところもあります。ここで簡単にまとめておきますので、よろしければご参照下さい。 以下で解説するのはHDI、GDI、GEM、ついでにGGGIです。最初の三つは国連開発計画(UNDP, United Nations Development Programme)が毎年発行する『人間開発報告書(Human Development Report)』で発表されます。 HDI (Human Development Index) HDI(人間開発指数)はジェンダー関連指標ではありませんが、GDIの算出方法のもとになる指標なので、説明しておきます。これは国ごとの生活全

    各種ジェンダー関連指標のまとめ - 社会学者の研究メモ
  • 少子化問題の整理 - 社会学者の研究メモ

    社会学ちょっと前に野田聖子議員が少子化問題についてぶっちゃけてました。自民党少子化を加速させた:自民党・野田聖子衆院議員インタビュー(日経ビジネス、2010.2.15)内容をまとめつつ、コメントをつけてみます。最初に言っておきますが、正確な知識は各自に文献をあたるなどしてください(検索すればいくらでも出てくる)。ここでは粗めの情報のみです。あと、「子どもが増えてだからどうなんの」という(controversialな)話もしてません。一言だけいっておくと、「日だけ他の先進国と違って少子化を放置する」というのは、社会主義ほどではないにせよ壮大な社会実験の域になりますから、ちょっとスリリングすぎるような気もします。(いや、今でも十分実験状態なんだけど。)問題の整理...とその前に、頭の整理をしておきましょう。いま極端な少子化で深刻に悩んでいる主な先進国はというと。まず、日もびっくりなペース

  • 家事分担研究の現在 - 社会学者の研究メモ

    社会学そのうちこちらでプレゼンをすることになりそう...なので頭の整理メモ。話自体は家族と仕事に関する日の研究アジェンダの変化についてを予定しているのですが、家事分担研究も重要なパートです。家事分担研究は、いくつかある家族社会学の流れの中でもかなり目立ったグループを形成しています。なかでも盛んなのは夫婦間の家事分担規定要因の研究(家事分担はどういった要因で決まるのか?)です。参考までに、日の夫婦の家事分担の現状を示すデータをご紹介しましょう。以下は、夫婦の家事時間の総量を100としたときのの分担割合(%)です*1。...というわけで、ごらんのとおりのありさまです。日の家事分担のへの偏りぶりは家族社会学界では周知の事実で、世界を見渡してみても、日の男はダントツで家事をしていません。このデータを見て、「そりゃ日の男はめちゃくちゃ働いているもん、無理もない」と思われるかもしれません

    nakokai_tobokai
    nakokai_tobokai 2010/02/16
    日本は企業も家庭もサービスの量・質を追い求めすぎてるのか 国際比較でそもそも家事の量が多いかもしれない・家事のトレーニングコストなど参考になった
  • 旦那だけハッピーな夫婦は破局しやすい? - 社会学者の研究メモ

    社会学こわいですね〜。ネタは、NYTime経由で見つけました。もとの論文はこれ。タイトルを訳すと「奥さんより幸せになっちゃダメ:幸福度ギャップと離婚」。Cahit Guven, Claudia Senik, Holger StichnothI, 2009, "You Can’t Be Happier than Your Wife: Happiness Gaps and Divorce", IZA DP No. 4599.適当に要約しておきます。(しっかり読んでないので詳細は各自原著にあたっちゃってください。)仮説:他の条件が同じなら、幸福度ギャップの大きい夫婦は離別しやすい。データ:ドイツ、イギリス、オーストラリアで実施された世帯抽出のパネルサーベイから。ドイツ(GSOEP, 1984-2007)、イギリス(BHPS, 1996-2007)、オーストラリア(HILDA, 2001-2007

  • シンプソンのパラドックスの図解 - 社会学者の研究メモ

    まず、シンプソンのパラドックスというのは以下のような状態のこと。新薬の旧薬に対する生存率の優位性を考えてみましょう。 死亡 生存 旧薬 600 500 新薬 900 100 これだけみると、旧薬生存のオッズは0.83、新薬生存のオッズは0.11、オッズ比0.13で新薬の方が圧倒的に死亡しやすいということになります。ここで第3の変数である性別を導入し、層別分割表を書いてみると... 女 死亡 生存 男 死亡 生存 旧薬 100 5 旧薬 500 495 新薬 890 88 新薬 10 12 となり、女の新薬生存のオッズ比は1.98、男のオッズ比は1.21となり、どちらもプラスになります。男女の区別なくデータを見たときは新薬が不利だったのが、男女別にすると新薬が有利になるため、パラドックスと呼ばれています。なぜこれが生じるかというと、男女で薬の効き方の方向は同じ(プラス)だが、全体的に死亡率の

    シンプソンのパラドックスの図解 - 社会学者の研究メモ
  • リベラリズム、コミュニタリアニズムと社会学 - 社会学者の研究メモ

    先日ディスカッサントとして招かれた社会学史学会で、コミュニタリアニズムについて話をする機会があった。おさらいがてら読んでみたのが、菊池『日を甦らせる政治思想:現代コミュニタリアニズム入門 』だったのだが...。私も、著者自身が「日ではコミュニタリアニズムは誤解されている」と述べるとおりであると思うのだが、そうであればなお、批判者を説得できる書き方をした方がよかったのでは、と思う。私自身はどちらかといえばリベラリズムに共感しているが、残念なことにこのによってはあまり説得されなかった。自分が主張したい議論について書くのなら、その議論に真っ向から反対する論者を説得するつもりで行うのが理想である。たとえば市場原理を批判したいのなら、相手はミクロ経済学者である。 日を甦らせる政治思想~現代コミュニタリアニズム入門 (講談社現代新書) 作者: 菊池理夫出版社/メーカー: 講談社発売日: 200

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