恐らく皆様は五武冬史(別称鈴木良武)というアニメ脚本家をご存じないと思う。私はロボットアニメが好きだったことから、五武作品をそれこそ浴びるほど見てきた。現在でもゲーム「スーパーロボット大戦」シリーズを一本やれば、五武作品に幾らでも会うことができる。私は80年代に起きた「リアルロボット」というムーブメントに対する功績は、ガンダムの監督である富野喜幸一人に起因するものではなく、むしろ五武先生にこそ、その大半の功績があると思っている。またエヴァ以前のアニメ脚本家の中では、五武先生は間違いなく五指に入る実力の持ち主であるのに、ほとんど代表作を持っていない。筆者はこの企画の中で、前半部では五武先生が如何にしてリアルロボットというムーブメントを立ち上げていったか、そして後半部では五武先生が実に20年もの年月をかけて、如何にして「機動戦士ガンダム」という怪物に挑みつづけたかということを記していきたい。