家で暇を持て余して爪弾いているかのような、朴訥としたアコースティック・ギター。一音一音鍵盤を確認しながら弾いているかのような、スローでソフトなピアノ。本人による演奏自体は特におもしろいところがあるわけではない。しかし、高低を大げさに行き来するダンディなクルーナー・ヴォーカルが加わり、眠りから覚めてふらふらとよろめいているようなシンセサイザーがクリアなアンビエンスを漂わせて併走を始めると、途端に奇妙な様相を呈し、不思議なアルバム・カヴァーとも折り合いがついてくる。チェロを弾き語るArthur Russellの亡霊? 芝居がかったLeonard Cohen? 自己愛の強いDean Blunt? 情緒的でムーディーなシンガー・ソングライター作品だが、何かが大きく抜け落ちている。本人はいたって真面目だが、どこかズレている。そのシリアスな不調和と天然の乱調が美しい。 Lewisの"L'Amour"は