陽が落ちたので、もう夜ですねと私は言った。そうですねと彼は言い、夕暮れの色は複雑ですねえ、もうすっかり暮れているのに少し色が残っています、空がみんな夜の色にならないと夕暮れが終わらないような気もします、と続けた。 彼はそれから、何時からが夜ですか、と訊いた。私はびっくりした。よく知らない相手にそんなこと訊くなんて、思った。それから、何時から夜かという話題がプライベートな領域に属するというのは私の個人的な感覚で、それを口にしたからといって奇異なことにはならない、と思い直した。 私は四季を通して、何時から夜かという基準を決めている。春夏秋冬の境目は日付では決めず、年によって変えている。「この感じ、今日から春だ」と感じるのだ。その日からはどんなに寒くなっても春で、春になったらロングブーツは履かない、といった決まりごともある。もちろん、私の中だけに。 そういった決まりごとは時間や季節以外にもあって