LCDサウンドシステムについて語ること。そのためには、ただバンドの結成から現在まで順を追ってたどるだけでは十分ではない。その“前史”にあたる部分、すなわちフロントマンのジェームス・マーフィー個人の経歴をさかのぼって話を始める必要がある。なぜなら──平行して走る“サイド・ストーリー”も含めて、LCDサウンドシステムとは、2000年代に全盛期を迎えたニューヨークの音楽シーンの象徴であるのみならず、連綿と続くインディ/アンダーグラウンド・ミュージックの歴史の一部であり、さらに言えばポップ・ミュージックとの交差点でもあるからだ。 ◆LCDサウンドシステム画像、ミュージック・ビデオ マーフィーがLCDサウンドシステムを始めたのは2001年。しかし、その10年以上前に、アメリカのポスト・ハードコア・シーンの片隅でマーフィーがミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせていたことは、いまでは忘れ去られた