ブックマーク / nix-in-desertis.blog.jp (15)

  • nix in desertis:なぜイスラーム国は預言者ヨナの墓を破壊したか,と聖遺物崇敬の話

    ・預言者ヨナの墓、ISISが破壊 キリスト教などの聖地(CNN) 武装勢力に破壊されるイラクの文化遺産―預言者ヨナの墓も(ウォール・ストリート・ジャーナル日版) イスラーム過激派のISIS(自称「イスラーム国」)は,預言者ヨナの墓廟とされる建物を破壊した。これに対するリアクションで多く見られたものは,「狭量な過激派がまた異教の宗教施設を破壊したか」というものと,ヨナが『クルアーン』にも登場していることを知っている人たちの「イスラーム教での聖人であるはずのヨナの墓をなぜ」というものであった。後者の疑問については,実はかなりいいところを突いている疑問だと思う。ちなみに,2年ほど前にもアルカーイダ系の組織がイスラーム教の聖者の墓廟を破壊している。つまり,これはISIS独自の行動というよりも,過激派にある程度共通する行動といってよい。ここら辺について,ちょっとした解説を試みる。 まず,根的な話

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    naryk 2021/07/29
  • nix in desertis:「受験世界史の音楽史がやばい」に寄せて

    ・受験世界史の音楽史がやばい(増補あり)(allezvous’s blog) これの受験世界史側から見たあれこれを。 ・そもそもこんなに覚えなくてもよい 私をして見たこと無い入試問題がめちゃくちゃ多い。これは私が00年代半ば以前だとさすがに私大は綿密に解いていないという事情があるので,半ば私の調査不足が原因である。とはいえ元のpdfに掲載されている入試問題の年度を見ていただけると,2001年や2003年の問題がけっこう含まれており,中京大や愛知淑徳大といった,あまり特別に大学別の対策をしないような大学の入試問題からも拾っている。このプリントの作者は,中堅以下の私大に限れば私よりも断然研究している。 逆に言ってしまうと,そこまでしないと音楽史の入試問題抜粋集なんて作れないのである。拙著でも何度か取り上げているが,高校世界史は明らかに文学偏重であって,扱いの重さは文学>美術・建築>その他である

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    naryk 2021/02/10
  • nix in desertis:「皇帝教皇主義」という用語について

    皇帝教皇主義とは,西欧側から見えたビザンツ帝国の宗教政策(理念)のことである。西欧では皇帝(帝権)と教皇(教権)が並立し,名目上はそれぞれが世俗・教会を統括する分離した存在であると見なされていたが,実際には800年のカール戴冠や962年のオットー戴冠がローマ教皇主導で行われたこと,コンスタンティヌスの寄進状,聖職叙任権闘争の影響などから,教皇の承認がなければ皇帝が成り立たず,教皇が世俗の統治にしばしば介入する構造に移っていく。これに対し,ビザンツ帝国では皇帝がコンスタンティノープル総主教を完全に支配し,世俗・教会の両権において最高権力者であった,というように当時の西欧人からは見えた。その専制性の高さを,半ば侮蔑を込めて「皇帝教皇主義」と呼んだのがこの用語の意味合いである。 さて,近年この用語は批判が多い。理由としては主に以下の3つが挙げられる。 ・コンスタンティノープル総主教は「教皇(Pa

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    naryk 2021/02/10
  • nix in desertis:『けものフレンズ』感想

    ご多分に漏れず,私も最初は全くのノーチェックであった。そして作に気づいたのは,骨しゃぶりさんのこの記事だった。 ・アニメ『けものフレンズ』は人類史600万年を探求する 正直,この記事を読んだ最初の感想は「まーた骨しゃぶりさんは大げさに書きおってからにwww」だったのだが,1話を視聴してマジもマジだったので椅子から転げ落ちた。よくもまあ1話にあれだけ詰め込んだものだ。確かそれが1月27-28日頃で,まだ2話と3話の切り替わりくらいの時期だったと思う。3話までは立て続けに見てすっかりはまってしまった。おそらく同じような行動の人は少なからずいて,あの記事は『けものフレンズ』受容史を作るとしたら欠くべからざるものだと思う。世間的に爆発したのが2/6頃だそうなので,自分を含めてあの記事で見始めた勢は比較的アーリーアダプターの部類といえるかもしれない。もちろん,アプリ版からの支持者や1話ですぐ気づい

  • nix in desertis:イギリス農業革命と産業革命を,高校世界史でどう説明するか

    高校世界史深掘りシリーズ。またしても経済史になるが,こういうネタは経済史の方が拾いやすいというのはある。18世紀後半から19世紀前半にかけて,イギリスでは産業革命が起きているが,その前段階として農業革命も起きている。 農業革命とは,狭義には農業技術の革新である。細かく言えば農具の改良や土壌改良手法の確立等もあいまって全般的に改良されたようなのだが,高校世界史上でも取り上げられる最大の革新は,三圃制農業が四輪作農法(ノーフォーク農法)に切り替わったことであった。すなわち,輪作の周期に窒素固定を行うマメ科の植物(の根粒菌)を入れることで地力の回復を早めつつ,家畜用作物も生産することができるようになった。これによって休耕地が消滅し,穀物が増産され,同時に畜産物の肥育も容易になった。近代的混合農業の始まりである。 こうした農法の切り替わりは農村のあり方に波及することになる。イギリスの農村ではそれま

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    naryk 2020/07/27
  • nix in desertis:『物語 オーストリアの歴史』のまずい点について簡潔に

    山之内克子先生は『ハプスブルクの文化革命』が大変な名著で,『物語 オーストリアの歴史』も面白く読んだ。ドイツの美術史をやっていた人間としては,アンゲリカ・カウフマンに触れてくれたのは,書がオーストリア各州の地方史の集成であることを考えると当然であるとはいえ,大変に嬉しかった。 ・SNSの時代にを書くということ・・・新書「ヒトラーの時代」に思う(yoshiko Yamanouchi|note) → その上で言うと,この説明はちょっと受け入れがたい。そのTwitter上で指摘されていたように,「一次史料との兼ね合い等の事情から,書では「オスマン・トルコ」で統一する」と冒頭に注意書きを入れておけば解決した話であり,そうしなかった以上は著者・編集者側の落ち度であろう。どちらかというと,そうした注意は編集者が払うべきであるので編集者の過失の方が大きい。なので,このnoteで「校閲のレベルが高か

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    naryk 2020/02/02
  • nix in desertis:『宇崎ちゃん』バッシング騒動についての雑感

    件についての議論の要点は,『宇崎ちゃんは遊びたい!』という作品を初見時にどう読解するか,という点にあると思っている。ある人が「ある程度この種の作品を見慣れている人たち(主にオタクと呼ばれるような)なら,仮に『宇崎ちゃん』という作品を全く知らなくても,この3巻の表紙を見たら,まあ大体『高木さん』とか『長瀞さん』とかの,あの系統の作品なんだなという想像がつく」と書いていて,それに完全に同意する。そう,文脈がわかる人には,乳袋表現はあくまでヒロインをかわいく見せる一つのテクニックでしかなく,そこが作品全体の主要ではないことに容易に察しがつくのである。(※) しかし,そうした文脈を読む力が一切ない人がこの絵を見たとして,これだけの解釈ができるかどうか考えてみると,まあ無理かろうなと思う。どう見ても絵の中央にやけに強調した胸が鎮座し,注射針が怖い男性を見下して煽っているかのようなセリフまで付いてい

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    naryk 2019/11/30
    巨乳である種わいせつな外見の女性が描かれているからといって女性を性的存在としてのみ見ているわけではない、という主張、なかなか説得力がある。
  • nix in desertis:2019受験世界史悪問・難問・奇問集 その1(上智大・慶應大の途中まで)

    今年も無事に公開に至ることができた。協力してくれる方々に感謝を申し上げたい。まあ,事情が複雑すぎて解説を書くのが追いつかなかったものが今回は2問ほどあるのだが…… ・収録の基準と分類 基準は例年とほぼ同じである。 出題ミス:どこをどうあがいても言い訳できない問題。解答不能,もしくは複数正解が認められるもの。 悪問:厳格に言えば出題ミスとみなしうる,国語的にしか解答が出せない問題。 → 歴史的知識及び一般常識から「明確に」判断を下せず,作題者の心情を読み取らせるものは,世界史の問題ではない上に現代文の試験としても悪問である。 奇問:出題の意図が見えない,ないし意図は見えるが空回りしている問題。主に,歴史的知識及び一般常識から解答が導き出せないもの。 難問:一応歴史の問題ではあるが,受験世界史の範囲を大きく逸脱し,一般の受験生には根拠ある解答がまったく不可能な問題。記事で言及する「受験世界史

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    naryk 2019/03/20
  • nix in desertis:世界史上の諸君主の出題頻度グレーディング:イングランド王(テューダー朝以後)編

    これの続き。ちょっと間が空いてしまったが,やっていきます。 基準はこれまでと同様に以下の通り。 A:基礎知識。センター試験世界史B以上の入試を受けるなら知ってないとダメ。 B:国立二次・MARCH以上の私大を受けるなら必要。 B-:教科書に載っていて用語集頻度もそれなりに高いが,便宜上掲載されているという色彩が強く,実際には入試にはほとんど出ない。ネルウァが好例。 C:高校世界史範囲内・外のグレーゾーン。用語集頻度が低いか掲載されていないもの,または旧課程では範囲内だったもの等,早慶上智対策としてなら見るもの。 D:高校世界史範囲外だが,早慶上智でなら見たことがある。満点が欲しいなら覚えてもいい(が当然推奨しない)。 E:完全な高校世界史範囲外で,早慶上智ですら10年に1回未満のレベルでしか見たことがない。 視認性を高めるために,グレーディングのアルファベットに沿って☆を付した。Aなら6個

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    naryk 2018/12/28
  • nix in desertis:不安・死・性愛の画家

    都美のムンク展に行ってきた。前にムンク展があったのは2007年のことであるから,約11年ぶりの東京でのムンク展ということになる。もっとも,図録には「回顧展というべき規模のムンク展は,日では20年ぶり」というようなことが書いてあったので,11年前のものはカウントされていないらしい。確かに《叫び》が来ておらず,画業の全てを俯瞰するというよりも《生命のフリーズ》の装飾性についての展示になっており,正直よくわからなかったのが当時の感想である。まあ,よくわからなかったのはキュレーション半分,当時はまだあまり詳しくなかった自分の知識の足りなさ半分というところだろう。 そこへ行くと今回の展覧会は完璧で,約100点ながら,ムンクの画業をちゃんと追うことができる構成になっていた。代表作も《叫び》は当然のこととして,《不安》《マドンナ》《吸血鬼》と勢揃い。来ていなかったのは《思春期》くらいではないか。ムンク

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    naryk 2018/12/28
  • nix in desertis:限りなく陶磁器っぽいガラス

    サントリー美術館の清朝ガラス展に行ってきた。中国というと陶磁器のイメージが強く,しかもそのイメージは概ね間違っていない。ガラスの発見自体は諸説あるものの,春秋時代末期から戦国時代のこと(ちなみにこの時のガラスは鉛ガラスと言って,透明度は高いが量産しづらいもの)。しかし,その後はどうも関心が向かなかったようで,明代くらいまで大した技術進化が無く,量産もされなかった。今回の展示でも,その最初期の春秋戦国時代〜後漢頃のガラス製品が何点か展示されていたが,技術的進化がなさすぎるのか,その後の三国〜明代のガラスは一切展示が無かった。そして時代が清初に飛ぶ。 しかし,清初にイエズス会士がソーダ石灰ガラス(アルカリ石灰ガラス)の技法を伝えると,時の皇帝康熙帝が紫禁城内に官営のガラス工房を作らせ,やっと中国のガラス工芸が開花することになった。ただし,おそらく西欧側の技術も発展途上だったのであろう,この時の

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    naryk 2018/06/12
  • nix in desertis

    貴景勝は兵庫県芦屋市出身,芦屋ではトレーニングで坂道を後ろ向きで走っていたという奇行で目立っていたという。小学生時代はK-1のファンで,極真空手を習っていたが,判定で決着するのを嫌って相撲に転向した。突き押し相撲に徹したのは幼少期の経験ゆえだろうか。2014年に貴乃花部屋に入門,高校時代から活躍していたため,好角家の前評判は高く,その通りに出世していった。2016年五月場所に十両昇進,2017年初場所に新入幕と番付を駆け上がり,新入幕を契機に四股名を名の佐藤から貴景勝に改名した。改名について,当時の私は「その四股名縁起が悪すぎないかという心配を勝手にしていた」と書き残している。正直に言えば今でも縁起が悪いなと思っている。どうせなら景虎で良かったような。 それから2018年頃まではエレベーター状態であったが,後述するように九月場所で独特の取り口に開眼して覚醒し,九州場所で小結で初優勝を飾っ

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    naryk 2018/05/28
  • nix in desertis:「歴史系用語精選案(1次案)」への具体的指摘事項

    こちらで書いたものの,具体的な指摘の詳細版。 ・消された理由を推察し,肯定的に評価しているもの 【古代】 ◯ミタンニ・カッシート・リディア・メディア → 古代オリエント史全体の流れから鑑みて,具体名は不要。こいつらのせいで多くの高校生がオリエントで早くも脱落するので,消すのは正解だろう。 ◯アメンホテプ4世 → ここから一神教が始まってエジプトにいたヘブライ人に広まり……は端的にって偽史なので。 ◯アイスキュロス・ソフォクレス・エウリピデス → これらに限らず,現行の世界史の文化史は収録基準がぐちゃぐちゃで非常に気持ち悪いので,再整理が必要。少なくとも古代ギリシア・ヘレニズムは明らかに多すぎる。 ◯ダキア・パンノニア → それぞれルーマニア・ハンガリー大平原で問題ない。その他も含めて基的に古代名不要(ビザンティウムのような例外以外は)。 ◯アリウス派・ネストリウス派・単性論派 → 異端の

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    naryk 2018/03/19
  • nix in desertis:輝くジャーヒリーヤの時代

    東博のアラビアの道展に行ってきた。驚きの常設展チケットで入場できる=実質無料の企画展である。しかも全館写真撮り放題。総展示数424展で展示替え一切無し。さらに入り口の外にベドウィンのテントが張られ,テントに行くとアラビアコーヒーとデーツ(ナツメヤシ)のもてなしを受けられる(もちろんこれも無料,ただし先着順で完売有)。オイルマネーだ…… 展覧会名はダブルミーニングで,古来通商路となってきたアラビア半島という意味と,サウジアラビア建国に至る歴史という意味が重ねられている。もっとも,展示の9割は前者で,後者はおまけという様子であった。とはいえサウジの政治観が全面に出たキャプションにはなっていて,たとえば中東地図の地名も,よくみるとペルシア湾ではなくてアラビア湾になっている。私以外の人はさして気にしていなかったけども。 展示は先史から始まっていて,とはいえ石器の類はどこも同じではある。ただし,新石

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    naryk 2018/03/17
  • nix in desertis:2018受験世界史悪問・難問・奇問集 その1(上智大・慶應大)

    昨年に2巻を発売して一区切りつき,業も計画的に仕事を進めた結果,それなりに余裕ができたので,年は全編公開とすることができた(追加で少し日史までできた)。協力してくれている校正者の皆さんにも感謝したい。 ・収録の基準と分類 基準は例年とほぼ同じである。 出題ミス:どこをどうあがいても言い訳できない問題。解答不能,もしくは複数正解が認められるもの。 悪問:厳格に言えば出題ミスとみなしうる,国語的にしか解答が出せない問題。 → 歴史的知識及び一般常識から「明確に」判断を下せず,作題者の心情を読み取らせるものは,世界史の問題ではない上に現代文の試験としても悪問である。 奇問:出題の意図が見えない,ないし意図は見えるが空回りしている問題。主に,歴史的知識及び一般常識から解答が導き出せないもの。 難問:一応歴史の問題ではあるが,受験世界史の範囲を大きく逸脱し,一般の受験生には根拠ある解答がまった

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    naryk 2018/03/17
    入試の世界史が暗記クイズなのは否定できない。
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