2022年2月24日以降、ロシアによるウクライナへの大規模な軍事行動が続いている。戦闘の長期化が見込まれる中、わが国においてもロシア産原油の輸入規制による燃料価格の高騰などの影響が及ぶ。小麦やトウモロコシなどの先物取引価格も高騰を続けるなど、世界的な規模での食料・穀物供給減が懸念されている。本稿では、ウクライナ農業の概要や世界市場の中で同国が果たしてきた役割を整理し、目下のウクライナ侵攻が世界の食糧状況に与える恐れのある影響について紹介したい。 世界有数の農業国 東はロシア、北はベラルーシ、南は黒海に面するウクライナは人口約4000万人、国土は日本の約1.6倍にあたる約60万平方キロの広さを有する東ヨーロッパに位置する国で、ソ連崩壊により1991年に独立した。 旧ソ連時代のウクライナは、連邦内の分業体制の中で鉄鋼、造船、航空宇宙産業などの軍需産業、そして小麦を中心とした穀物生産を担っていた