『サド侯爵夫人』(サドこうしゃくふじん)は、三島由紀夫の戯曲。全3幕から成る。無垢と怪物性、残酷と優しさの多面の顔を持つ夫・サド侯爵の出獄を20年間待ち続けた貞淑な妻・ルネ夫人の愛の思念を描き[1]、悪徳の刻印を押されたサド侯爵の人物像を、6人の女の対立的な会話劇により浮かび上がらせながら、ルネ夫人の最後の不可解な決意の謎を探った作品[2]。日本国内のみならず海外でも上演され続け、特にフランスで人気が高い戯曲でもある[3]。昭和40年度芸術祭賞演劇部門賞受賞作品。三島の最も成功した戯曲というだけでなく、「戦後演劇史上最高傑作の戯曲」と評価された[4][5][注釈 1]。登場人物が女性6人だけなので、男性4人のみの『わが友ヒットラー』と対をなす作品となっている[6]。 発表経過[編集] 1965年(昭和40年)、文芸雑誌『文藝』11月号に掲載され(舞台図の挿絵:秋山正)、同年11月15日に河