例によって、父が事故で入院した時の話をする。 父は、頭部外傷により、一時的に精神症状を呈した。ある時は、警察の陰謀により捕らわれの身となっていたし、ある時は遠方の病院に入院していたりもした。病室には毒ガスが充満していると言って断固病室に入らない日や、他の患者さんに「タイでお会いしたカーンさんじゃないですか!」と話しかけたりする日もあった。昼間はどれだけ揺さぶって起こそうとしても熟睡して起きないし、夜は睡眠導入剤もほとんど効果がなく、妄想を炸裂させて、あちこちと病院内を徘徊した。病院側からキーパーソン認定された私は、自宅に帰ることも出来ずに、父に付き添って妄想の相手をし、夜の病院を一緒に徘徊した。当時の上司はとても人間的な人で、私は2-3週間の休暇を取らせてもらって、付きっ切りで看病していた。 その日は、確か海外の病院に入院している設定になっていて、父は「ナースステーションにパスポートを預け
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