悲劇が起こったその日、執行官とともに、催告や強制執行の補助のため、業者・S氏がやってきていた。S氏の業務は、執行官を守り、強制執行ならば荷物の梱包・運搬などの実務を遂行することである。 S氏は日常、催告にあたっては、強制退去させられかねない居住者とコミュニケートし、任意退去が可能なように県に働きかけることもあった。また、転居先探し・生活保護申請の手伝いも行っていた。「病気などで歩行の不自由な居住者に対しては、市役所まで一緒に行って、福祉やNPOの人と話をすることも」あったそうである。そのような支援を行うことになるのは、催告・強制執行となる担当ケース全体の2〜3割だったそうだ。モチベーションの源は、 「最悪の事態、追い詰められて命を亡くす、そういった事態を避けたい」 である。 しかし今回、S氏は催告には関わっていなかった。「母子家庭で連絡が取れない」とだけ県から申し送りを受け、強制執