「立法事実」とは、立法的判断の基礎となっている事実であり、「法律を制定する場合の基礎を形成し、かつその合理性を支える一般的事実、すなわち社会的、経済的、政治的もしくは科学的事実」(芦部信喜、判例時報932号12頁)といわれている。簡単に言えば、どうしてその法律が必要であるのかということを支えている事実ということになろうか。 立法事実は、制定された法律が憲法に違反しているかどうかについて司法として裁判所が判断する違憲立法審査権に関連して注目されてきた経緯がある。代表例の一つが昭和50年4月30日の最高裁判所における薬事法による薬局開設の距離制限に関する判決である。かつて薬事法は薬局の配置基準を条例で定めることができるとしていて、広島でスーパーマーケットを経営している会社が申請した薬局開設を、既存の薬局から水平距離にして55メートルしか離れておらず、さらに半径約100メートルの圏内には5軒、半