海外の詩人たち―十九世紀末から現代まで(〔活字倶楽部」2003年春号より) 海外の、といってもここでは欧米の、一九世紀末から二〇世紀にかけての現代詩を紹介する。今、私の机に積み上がっているのは約百冊の詩集。もちろん日本語で、現在比較的入手しやすいものに限っている。その中の四十冊ほどを現代詩のおおまかな流れがわかるように整理していくことにする。(誌面の都合で訳者名は省略) 最初はフランスの詩人ボードレール『パリの憂愁(憂鬱)』(一八六九年)。この散文詩集から現代詩は始まった。行分けのないのが最大の特徴。まず巻頭の「異邦人」を読んでほしい。これが詩?と思う人はセンスがある。一見単純な会話にすぎない平明な文章が、自らの魂と対話する精神の姿を鮮かに描き出す。「私は雲を愛する…ほら、あそこを…あそこを…過ぎてゆく雲…すばらしい雲を!」これを同詩集中の他の作品と比べてほしい。例えば「世界の