本書の目的は、「リバタリアニズムの全体像」(3頁)を示すことである。それではそもそも、リバタリアニズ ム (libertarianism) とは何であろうか。それは、「諸個人の経済的自由と財産権も、精神的・政治的自由も、ともに最大限尊重する思想」(14頁)である。(リベラリズムは、 「「個人的自由」の尊重を説く一方、経済的活動の自由を重視せず経済活動への介入や規制や財の再配分を擁護する」(15頁)点で、保守派は、「個人的自由 への介入を認めるが経済的自由は尊重する」(同上)点で、そして権威主義は「どちらも尊重しない」(同上)点で、いずれもリバタリアニズムとは異なる。) しかしリバタリアニズムのなかでもさまざまな立場がありうる。これを著者は二つの観点から分類している。(21-22頁) A. 「いかなる国家(政府)までを正当とみなすか。」 (1) アナルコ・キャピタリズム(無政府資本主義)