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ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (17)

  • 被差別売ります - 傘をひらいて、空を

    もてるよねえと女たちは言う。可愛いものねえと私も言う。そんなことないですよおと彼女はこたえる。その回答はありふれているのにとても愛らしく、ちょうどいいタイミングで、ちょうどいい視線とともに発せられる。私は感心して、それから、言う。ねえ、もう会社辞めるんだし、いま利害関係のある人は残っていないでしょう。もてる秘訣でも教えて頂戴よ。なにしろ今日は女子送別会。あなたが女性ばかりで行きたいと言ったときにはちょっとびっくりしたけど、まあ、わかるよ、あなたはもてるから、退職ともなると男どもがいつにもましてうるさくて、そしてあなたがうるさくしてほしい人はうちの会社にはもういないってことだよね。 彼女はうふふと笑う。ワイン、もう一、ボトルで取っちゃおうか、と私はけしかける。いいですよ、私は先輩だから、リストのこのあたりまでならご馳走できますよ。彼女は絶妙なタイミングで顔の前に手をあげてそれを動かし、否定

    被差別売ります - 傘をひらいて、空を
  • 正しい愛 - 傘をひらいて、空を

    抜栓する夫の手つきを彼女は好きだった。だからほほえんでそれを見ていた。彼は彼女のグラスとそれから自分のグラスの前でボトルを傾けた。ありがとうと彼女は言った。夫は上機嫌で彼女も同じくらい機嫌がよかった。それは久しぶりに彼らの双方が翌日に仕事を抱えていない夜で、彼らは順繰りに仕事の話をし、相互に感想を述べた。彼らはふたりとも、思考にいささか攻撃的なところがあり、ひどく明瞭な発音の早口で、相手の頭の回転の速さを好んでいるところがあった。 ほんとの夫婦の会話ってたぶんこういうんじゃないんだろうなと彼女は、頭の裏でぼんやりと思う。ほんとうの夫婦。正しい夫婦。そんなものは存在しないと知っているけれど、同時に彼女の頭の中にはいつだってその片割れがいる。正しい。都度の言動がほんとうはどうなされるべきだったかを、だから彼女はひとつひとつ知っている。 正解は、と彼女は思う。正解はワインを開けさせないこと。弱

    正しい愛 - 傘をひらいて、空を
  • 透明な要求を捨てる - 傘をひらいて、空を

    癒されるねえ、と彼は言う。なにそれと彼女は訊く。なにって、つまり己の身の裡の回復が亢進し快いですね、という意味です。彼はそのように説明し彼女はからだの半分で寝返って皮膚でもって壁の温度を吸う。視界を走査する。たっぷり泳いだあとのシャワーの水分の空気に溶けたのと、半分ずつあけたビールの缶と、さっきまでのうたた寝の気配と、そのほかのなにも見あたらない。視線を内側に向ける。ちいさい刺をみつける。その輪郭を描写する。 癒した覚えゼロだし、私なんにもしてあげてないし、だいいち癒しとかそういうの、嫌いなんだけど。だけど、と彼はその語尾を引きとる。だけど俺はそれを口にしたので、それであなたは。それで私は、不可解でやや不快、だと思う。不快になることない、と彼はねむたくて気持ちいい声のままで言う。だってあなたの嫌いな癒しは俺の言ったこととはなんの関係もないんだ。 癒すなんて下賎な言い回しだよ、まったくのとこ

    透明な要求を捨てる - 傘をひらいて、空を
  • 飛ぶものに変わる - 傘をひらいて、空を

    口にしてはならないもの。氏名、所属、住所、電話番号。できるかぎり避けるべきもの。自分に強く関連する誰かやどこかの固有名詞。口にしてもかまわないもの。漢字なしのたがいの名前、簡単に変更でき重要な知人との連絡に用いていないウェブサービスのアカウント、おおまかな職種、おおまかな生活、年齢、彼らの使用する巨大なターミナル駅から乗りこむ路線、読んだ、聴いた音楽、過去の愛に関する物語、軽蔑する人間についての描写、子どものころに怖かったもの、昨日服を買った店、抽象的な議論、偏狭な美意識、あらゆる種類の嘘。 そのようなルールがはじめから存在したのではないけれども、はじめから一年ばかり経つその夜に至るまで彼らはそれを、結果的に遵守している。彼らに共通の知人はなく、共通の所属はなく、たまさか同じ場所に居あわせて少し口を利いて、なんとなし好ましく感じて、また会う気になって、その次も会う気になった。二度目のとき

    飛ぶものに変わる - 傘をひらいて、空を
  • 弱者の様式 - 傘をひらいて、空を

    槙野さんは相変わらずサムライだなあと言って彼は笑った。私は最低限の愛想をいやいやながらに添加した顔を傾けた。私はこの人を好きではなかった。ふだんはたいした接点がなく、親しくもないのだから、崩れたことばを発すべきではない。そう思って、口を利くたび不快を感じた。ふだん一緒に仕事をして信頼している年かさの上長が敬語を遣わないのとはわけがちがう。 彼は私を査定し、取り替えの利くものとして取り扱う。そんなのはかまわない。だってここは会社だ。私は私の能力と労働を売り、彼はそれを審査する。そうした間柄には表面上の礼儀正しさが必要で、でも彼は私に対してそんなコストの必要性を認めるつもりはないらしかった。所有物に対するようなある種のなれなれしさを彼は示していた。猿を見る猿回しの目。 サムライだよ、だって、と彼は背筋を曲げたまま続ける。昔からときどきさ、三年に一度くらいかな、抗議っぽいことするでしょ。これは適

    弱者の様式 - 傘をひらいて、空を
  • たちの悪い鏡 - 傘をひらいて、空を

    打ちあわせから戻ったら七尾が彼のデスクの前に立っていたので彼の腹の底に小さな吐き気の種が生まれた。それから七尾の指がデスクの天板に触れているのを見て取った。種が浮上する。七尾はさりげなく背後の自分のデスクに戻る。何か、と不自然なほど遠くから彼は声をかける。七尾は後ろを向いたままかすかに首を振る。 七尾は彼の同僚で、同じ仕事をしている。職位も同じだ。今のところは、と彼は思う。彼はその部署でひとりだけ飛びぬけた成果を出している。顧客たちは彼を指名し、彼の仕事に他の五割増しの対価を提示する。彼が取ってくる、あるいは彼にやってくる仕事のすべてを彼が引き受けることはできない。彼の上司がそれを他のメンバに振り分ける。七尾もそのひとりだ。 七尾がぬっと彼の視界に入ってくる。彼は眉をひそめる。二時、三時、と七尾は言う。彼は眉のあいだの皺を深くする。ミーティング、と七尾は言う。定例ミーティングの時間が変更に

    たちの悪い鏡 - 傘をひらいて、空を
  • 墓荒らしの量刑 - 傘をひらいて、空を

    あなたは私に気を許してなんでも無防備に見せている、それが気持ちいいから私にはあなたのことがわかると誇示したかったんだと思う。彼女はそのように話す。とても醜い欲望だよ、許されないのも承知の上で私はそれに負けた。だからしかたがないんだよ。 彼女の友人がそんなのを織り込んで彼女を許したらいいのにと私は思う。でもそれは観客である私の欲望にすぎない。 不自然に白い皮膚を押して古いなと彼女は思う。古い古い傷だ。ほとんど傷でないように見える。なにかの拍子に色素が抜けた箇所のような。でもそれはあきらかに鋭角を持つ切り傷のかたちをして、深く切ってぱっくりと割れたのでなければ人体にそんな痕跡のつくはずのないことを彼女は知っていた。そしてそれを口にした。いつ切ったの。 彼女はそれを見慣れていた。彼女が友人にアーモンドの油を塗ってその不器用な筋肉をほぐしてやるのは今にはじまったことではないし、人に触れるとき彼女の

    墓荒らしの量刑 - 傘をひらいて、空を
  • あらかじめこぼれ落ちているものたちのために - 傘をひらいて、空を

    彼はなんということもなく、友だちがシェアした写真を観ていた。それはすでに彼の習慣のなかに組みこまれていた。みんな撮るし、みんなアップする。彼は仕事の合間に、と小さい息子との卓が一段落したあとに、通勤の無聊に、それを閲覧した。それらはすぐれた写真ではなかった。あたりまえの視点をただそのままごろりと投げ出したものが大半だった。友だちはカメラを好きで、でもあるときからほとんど意図的にそういう撮りかたをするようになり、彼はそれを好ましく思っていた。 そのようなものをこそ彼は好んでいた。すぐれた写真はすでに大量の商品として出回っているのだし、商品なんか金を出せばいくらでも買える。彼はそれに飽いており、けれどもだからカメラには飽きたんだよと言うことはどうしてかいやだった。そうして技巧から離れた無造作な写真を大量に閲覧する習慣を身につけた。それがなにかの惰性もしくは欺瞞であってもかまわないと彼は思っ

    あらかじめこぼれ落ちているものたちのために - 傘をひらいて、空を
  • 彼のやさしい男の子 - 傘をひらいて、空を

    見合いみたいだと彼は思う。見合いになんか行ったことはないし、目の前にいるのは親くらいの年齢の男だけれど。けれどもこの男は僕の釣書を見ているし、交わされるのは表面的な、そのくせえらく計算高い、だから総じて効率的な、そういう会話だ。 彼は彼の上司上司事をしていた。上司上司はいくつかの部署を統轄しており、管理職候補を連れて来させて顔あわせをしていることを、その場にいる全員が理解していた。別の部署の上司的な人間とその部下的な人間がひと組、単独で来ている部下的な人間が二名。場つなぎ要員か、上司層より若く彼らよりは年嵩の、ときどき部署をまたがる宴会の幹事をやっている女の社員がひとり。彼の隣には彼のひとつ後輩の華奢な女が座っている。 この子はこんな顔して仕事はけっこうえぐいんですよと後輩の上司が言い彼女はころころと笑う。彼の上司が彼を売りこむように彼の出た米国の大学の名を口にする。TOEICのス

    彼のやさしい男の子 - 傘をひらいて、空を
  • 作文が終わらない - 傘をひらいて、空を

    七つの女の子と話をしていたら、作文が終わらなくて困っているという。彼女は小さい子にしては要領よくしゃべるんだけれども、なにしろ七歳は七歳なので、話がくどい。しかもしょっちゅう脱線する。最後まで聞いて推測するに、どうやら何を書いて何を省くかがわからないので作文が長くなっている、ということらしかった。 学校の授業の作文で七五三の話を書くことにして、けれども原稿用紙六枚書いてもまだ、当日の朝ごはんが終わらない。メニューとその匂い、湯気のようす、パンの焼き加減の好みに関する主張で六枚目が終わってしまった。今までのぶんを捨てて書き直すべきか、という意味のことを、彼女は言う。読ませて頂戴と言うと、ずいぶんとはずかしがってから、結局読ませてくれた。 八枚切りのパンを焦げるぎりぎりのところまで熱してからバターを塗り、しみこませてべる、ジャムはパンに塗るべきではない、ヨーグルトにいっぱい入れたほうがいい、

    作文が終わらない - 傘をひらいて、空を
  • 感情を外注する - 傘をひらいて、空を

    うれしかったのねと彼女は言う。そうだねと彼はこたえる。それからほほえむ。彼女もほほえむ。いやだったのねと彼女は言う。そうだねと彼はこたえる。それから彼らは眉間に皺を立てる。まったく同じ深さで。それが同じ深さになるまで三年と八ヶ月を彼らは要した。彼女がまずやってみせて、彼がそれにしたがう。それを繰りかえしたから、彼は今ではとても上手にそれができる。彼女さえいれば。 彼らはなるべく一緒にいる。できるだけ長いあいだ手をつないでいる。彼らはすでに睡眠をともにする権利を相互に付与しているので、一日に平均六時間はそれだけで確保される。そのほかに彼らは週末の平均一日半を確保している。残りの半日を彼らはどうしても調整できない。彼らには社会生活というものがあるからだ。出張、休日出勤、結婚式に葬式、病人の見舞い、避けられない親戚の集まり。 そんなものがあると彼らはひどく苛立つ。彼女が苛立ち、それから、彼が苛立

    感情を外注する - 傘をひらいて、空を
  • 健康で文化的な最低限度の生活のためのスキルセット(案) - 傘をひらいて、空を

    を摂りながらほうれん草の冷凍のしかたについて話していると共通の知りあいが通りかかって、年ごろの男女の話題とは思われない、いいぞもっとやれ、と言って去った。私たちは大学生で、大学とアルバイト先が同じで、それぞれひとり暮らしをしていて、自分で自分の生活を支えていた。私たちは友だちだった。 年ごろの男女にちょうふさわしい話題じゃんと彼は言って大学の堂が無料で出すお茶をすすり、ほぼ水、とつぶやいた。それにしても成長したよねと私が言うと彼はそっくりかえって成長期だしとこたえた。背はもう伸びてないでしょうと返すとまだちょっと伸びてると言い張るのだった。 彼が私にはじめて電話をかけてきてから三年が過ぎていた。大学に入学したころの彼は実になんにも知らなかった。彼は私の住んでいた女子寮みたいな下宿の玄関にあるピンク色した電話を鳴らし、あのさあ槙野さん料理とかする、と尋ねた。凝ったものは作れないけど毎日

    健康で文化的な最低限度の生活のためのスキルセット(案) - 傘をひらいて、空を
  • 悪いお菓子 - 傘をひらいて、空を

    入社時期が近い十人ばかりと飲んでいて最近どうよと訊かれたのでふつうと彼はこたえる。そっちはと返すとがんばってるようとマキノはこたえてビールをごくごく飲んでいる。両手でジョッキを持って慎重に飲んだりしない。二の腕が太いと彼は思う。二の腕が太い、色が白い、鎖骨が太い、笑うと小じわが多い。わかっていたら笑わないはずなのに平気で笑うからきっとわかっていないんだろう。 近況を訊かれて当然のように仕事の話って荒んでるんじゃないと別のひとりが言い、そうかあとマキノが感心する。うん、ご家庭とか彼氏彼女とかそういう話したほうがいいよねえ。こいつら俺の彼女の話なんか聞きたくもないくせになんでそういう質問するかなと彼は思う。それからこたえる。飲み屋の姉ちゃんとつきあってる。すてきとマキノは言う。バーテンダーさんとかかしら。彼は呆れてキャバ嬢キャバ嬢とこたえる。いいねえ、つけ睫毛ついてる?髪の毛盛ってる?ぜんぶの

    悪いお菓子 - 傘をひらいて、空を
  • 大人に必要な想像 - 傘をひらいて、空を

    姉ちゃん俺あれかも、がんとかかも。とかってなによと彼女が尋ねると弟はあっけらかんと、なんか疑いがあるから詳しく検査するんだってさあ、と言う。会社のさ健康診断あるじゃん、毎年受けないと怒られるやつ、あれなんか意味あんのかなって思ってたんだけどあったね、わりと。 弟はちゃんと毎年健康診断を受けているのだ、と彼女は思った。少し感慨深かった。そもそも会社員をやっているのが感慨深いし、社員同士がみんな知りあいみたいな中小企業の人間関係もそれなりにこなしているようだから、もう完全に大人、まっとうな大人だ。弟がそんなふうになるなんて彼女は思っていなかった。悪いことはしないけれども自由すぎる弟で、何年か前にバックパッカーをするというからあらそうと見送ったら二年も帰ってこなかった。どうやって生きていたのか知らない。 あんた医療保険入ってるのと彼女は訊く。さすが姉ちゃん、真っ先にそれ聞いてくれる、と弟はこたえ

    大人に必要な想像 - 傘をひらいて、空を
  • 愛に殉じたそのあとに - 傘をひらいて、空を

    里佳子さんがふたつ年上の夫と結婚して三年になる。子どもができたので退職するという。おめでたい話だ。けれど里佳子さんに限っては少なからぬ数の社員が個人的にざわついており、不審がった後輩が私のところに理由を尋ねに来るほどなのだった。彼は訊いた。なんで家庭に入るとまずいみたいな感じなんですか。あの人旦那さんラブだし別によくないですか。そうとも里佳子さんは旦那さんラブだよと私はこたえた。だから私たちはどうしたらいいかわからない。 最初に里佳子さんとその夫の問題に気づいたのは、自分の結婚式の二次会に彼らを招待した社員だった。里佳子さんたちはまだ新婚だった。ふたりのそばを通ったときに聞こえたせりふに彼女はひやりとした。これだから頭の悪い女はいやなんだ。 あとは里佳子さん人から、少しずつ聞き出した。里佳子さんは愚痴を言わない。ただ彼女が当たり前だと思っている話が、当たり前でない内容をふくんでいる。里佳

    愛に殉じたそのあとに - 傘をひらいて、空を
  • ICチップが傷つくように - 傘をひらいて、空を

    彼は眼球だけでさっと左右を見渡し、これは秘密なんだけど、と言う。僕はほとんど文無しなんだ。今。現金に関してだけ。私は目を丸くし、彼の真似をしてそれを動かし、私のおばあさんの七十八のときの口調で、まあ、と言ってみせる。彼は笑う。私たちはおそらく私たちにしか通用しない冗談を何種類か持っている。 彼は空港に向かう前にコンビニエンスストアに立ち寄った。ペットボトルのお茶を買い、ミントのガムを買い、小さなシャンプーを買い、ATMで現金を下ろそうとした。それは彼のキャッシュカードを拒絶した。彼は片眉を上げ、そのエラーメッセージを暗記し、非常用に持っている郵便貯金のカードを使った。 彼は長いこと一緒にいた恋人をひどい経緯でうしなったばかりで、むりやり有給休暇を取って日の南の島に行くところだった。その島にはクレジットカードなんてことばはない、と彼は予測していた。なにしろなんにもないのだ。彼はそこで山羊の

    ICチップが傷つくように - 傘をひらいて、空を
  • 猫とコーヒーと人工的な嗜好 - 傘をひらいて、空を

    今年も乗り切りましたねと私は言った。おかげさまでと彼はこたえた。私たちはコーヒーカップを軽くかかげて乾杯に代えた。 彼の職場では毎年社員旅行が催される。彼は他人と同じ部屋で眠ることができない。公衆浴場もひどく苦手だ。けれど休むわけにはいかない。それで私は彼が戻ってくるとコーヒーでねぎらう。彼は見るからに消耗している。 彼は他人と物理的に近づくことが嫌いだ。それは彼に苦痛をもたらす。彼はごく若い時分、人並みに振る舞うことが義務だと考え、継続的に他人と接触する関係を努力して維持した。彼にはそれが不可能なのではなかった。不可能でないことがさらに彼を苦しめた。できるのだからしなければならないと彼は思い、長い苦痛に耐え、そして、あきらめた。 そのころから彼の接触を嫌う傾向は加速した。人だけでなくて、動物にも触れることができなくなった。今の彼は包丁で生肉を切ることもできない。住居に人が入ることがつらい

    猫とコーヒーと人工的な嗜好 - 傘をひらいて、空を
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