「学校に寄付したいという方々が今も頻繁に来てくれているらしいんですよ。“追い寄付”です。なにせ甲子園で19泊20日しましたから、その分を補うためにって。本当にありがたいことです」 今夏の甲子園、初戦でセンバツ甲子園・準優勝の報徳学園を、2回戦でタイブレークの末に長崎の強豪・創成館を、3回戦で再びタイブレークの末に早稲田実を下した。想定していた期間も予算も超えた甲子園滞在――「大社旋風」を当事者が強く体感したのは、実はそんなところだった。 「僕の采配ミスで負けてきました」 延長11回のタイブレークをサヨナラで勝ち抜いた早稲田実戦後、石飛は相手の監督、和泉実に声をかけられた。ひと言、「強い!」と。本や新聞記事で幾度となく目にしていたあの名将から……そんな感慨はあったが、石飛の内心はこうだった。「うちは強く……ない」。その思いは最後まで変わらなかった。