筆者が日本の出版社に勤めていた頃、その会社では日本の歴史や文化を肯定的に論じる書籍、いわゆる「日本すごい本」を大量に刊行していた。 なぜそれほど出すかというと、端的に言えばそこそこ需要があるからだ。 日本はこんなに素晴らしい国なんですよという情報を求めている方が世の中に一定数いる以上、この種の本はなくならない。 一応フォローすると、自国を誇る気持ち自体は、決して悪いものだとは思わない。 だが、「日本すごい」はややもすれば、「日本はこんなにすごいのに、おたくの国ときたら」という考えに発展しがちである。 また、この論調が好きな人は、そもそも自慢話とは嫌われるものいう意識が希薄なように感じられる。 さらに言えば、自画自賛することによって、事実であっても他者から信憑性を疑われるという可能性に無自覚なのではないかと感じる。 「世界一うまいラーメン屋」と看板に掲げている店が、本当に世界一おいしいかどう