自然界と人間界の線引き──。そう聞いたとき、あなたは何を思い浮かべるだろうか。 ジブリ映画『もののけ姫』のような壮大な世界観にも思えるが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験した私たちだからこそ、いま目を向けるべきテーマでもある。 「新興の感染症の流行は、生態系による人間社会への『逆襲』だ」と語る研究者がいる。生物多様性の専門家であり、国立環境研究所の生物学者・五箇公一だ。 新型コロナウイルス感染症と環境問題には、どのように密接な関わりがあるのだろう。また、アフターコロナの社会が向かうべき方向性とは。五箇が生態学の観点から解説する。 コロナ危機の原因は「自然界の撹乱」 1970年代以降、HIVやエボラ出血熱、SARSといった新しい未知なるウイルスが突如人間社会に現れ、新興感染症をもたらしています。これらのウイルスは全て、野生動物が起源とされます。 ウイルスは野生動物の体内に存在し、