『中動態の世界』から始まった,ケアをめぐる思索 「この本,看護の教科書の出版社だ」。2年前,夜勤明けは書店にふらっと寄るのが日課だった。疲れた身体で当然本なんて読めるわけがないのだが,そんな状態でも手にとって買う本はたいてい翌日に回復した自分に合っていてお気に入りになる。購買によるストレス発散は“夜勤後の看護師あるある”なのだが,本ならたとえ散財しても“勉学のため”と自分に言い訳できるのである。 あの日も夜勤中と同じように(各本棚を病室かのように)巡視していると,『中動態の世界――意志と責任の考古学』という本が目に留まった。白い表紙に活版印刷のような装丁が当時の自分にはなぜか新しく感じ,手に取ると「医学書院」の文字。すぐに学生の頃にお世話になった『系統看護学講座』を思い出した。「中動態って何? でも医学書院だから医療の話なのか?」と夜勤の疲れで回らない頭のままレジに向かって歩いていた。 夜