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ブックマーク / shorebird.hatenablog.com (7)

  • 書評 「ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか?」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか?~進化の仕組みを基礎から学ぶ~ (光文社新書) 作者:河田 雅圭光文社Amazon 書は進化生物学者河田雅圭による進化の一般向けの解説書になる.河田は新進気鋭の学者であった1990年に「はじめての進化論」を書いている.当時は行動生態学が日に導入された直後であり,新しい学問を世に知らしめようという意欲にあふれ,かつコンパクトにまとまった良い入門書だった.そして東北大学を定年退官して執筆時間がとれるようになり,その後の30年以上の学問の進展を踏まえ,改めて一般向けの進化の解説書を書いたということになる.ダーウィンの議論の今日的当否を問うような印象の題名だが,それは書の極く一部の内容で,基的にはいくつかの誤解が生じやすいトピックを扱いつつ進化とは何かを解説する書物になっている. 第1章 進化とは何か 1.1 そもそも進化とはなんだろうか? 第1章第

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  • 書評 「心理学を遊撃する」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    心理学を遊撃する 作者:山田祐樹ちとせプレスAmazon 書は認知心理学者山田佑樹による,「心理学の再現性問題」についてそれをリサーチ対象として捉えて突っ込んでいった結果を報告してくれる書物である. 「心理学の再現性問題」は,心理学者にとって自分のリサーチの基礎ががらがらと崩れていくかもしれないような重苦しいテーマであるに違いない.しかし著者はそれを軽やかに取り上げ,様々な角度からつつき,質を見極めようとする.物語としてはその突貫振りが楽しいし,再現性問題が非常に複雑な側面を持ち,かつとても興味深い現象であり,到達点がなお見えない奥深いものであることを教えてくれる.それはまさに最前線からの「遊撃」レポートであり,迫力満点の一冊だ. 第1章 心理学の楽屋話をしよう 第1章では心理学の「楽屋話」が書かれている.まず著者の駆け出しのころの研究(ランダムネスの知覚),面白い効果を実験で示せたと

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  • 書評 「生物学者のための科学哲学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    生物学者のための科学哲学 勁草書房Amazon 書は生物学にかかわる科学哲学の主要トピックについて科学哲学者や科学史家たちが解説したもの.編者は科学哲学者のカンプラーキスと生物学者のウレルで,書名にもあるように想定読者としては生物学者が念頭に置かれている. これまでの生物学の科学哲学の入門書だと「種とは何か」「自然淘汰の単位は何か」「系統樹の推定はどのような営みか」「利他行動の進化とマルチレベル淘汰」「発生システム論」などの個別の各論のトピックが主要テーマになっているものが多いが,書が取り上げるものは必ずしも「生物学の科学哲学」に限らないということで,「説明」「知識」「理論とモデル」「概念」などの基礎ブロック的なテーマが数多く取り上げられていてなかなかハードな内容になっている.原題は「Philosophy of Science for Biologists」. 第1章 なぜ生物学者は科

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  • 書評 「進化心理学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    進化心理学 (放送大学教材) 作者:大坪 庸介放送大学教育振興会Amazon 書は進化心理学者大坪庸介の手になる進化心理学の教科書だ.今2023年度から放送大学で「進化心理学」が開講され,その教材として出版されたものだ.放送大学なら(BS視聴環境があれば)誰でも視聴でき,このようにテキストも出版されているので,初学者にとってはとてもうれしい学習環境になったというべきだろう. 冒頭の「まえがき」でいきなり,「進化心理学について学びすぎないようにしてください」とあって驚かされるが,教科書に書いてあることを鵜呑みにするのではなく自分で考えることによって理解が深まるのだという趣旨のようだ.そして進化心理学は「進化・適応」という大原則から統一的な理解が得られるという面白さがあること,進化的な説明が現代の倫理観とかけ離れたものであることが多く,誤謬のリスクがある反面,価値中立的に事実を評価することに

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  • 書評 「社会正義」はいつも正しい - shorebird 進化心理学中心の書評など

    「社会正義」はいつも正しい: 人種、ジェンダー、アイデンティティにまつわる捏造のすべて 作者:ヘレン・プラックローズ,ジェームズ・リンゼイ,Helen Pluckrose,James Lindsay早川書房Amazon 書はアメリカのアカデミアで吹き荒れる行き過ぎたポリコレ,アイデンティティ・ポリティクス,社会正義運動,キャンセルカルチャーがどのような思想的な流れの上に発生したものか,代表的な議論はどのようなものか,そしてこれに対抗するにはどうすればいいのかを語るになる.著者たちはこれらの運動の基礎にあるのは1970年代に一世を風靡し,その後その非生産性とシニカルさから衰退していったと思われていたポストモダニズムにあるのだと喝破し,詳しく解説してくれている.著者は第2のソーカル事件(不満スタディーズ事件)の首謀者でもある数学者のジェームズ・リンゼイと評論家のヘレン・プラックローズ.原題

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  • 書評 「Speech!」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    SPEECH! How Language Made Us Human (English Edition) 作者:Prentis, SimonhogsaloftAmazon 書は通訳兼翻訳家(何カ国語も扱うが特に日語通訳としてのキャリアが長い)であるサイモン・プレンティスによる言語が使えることによりヒトは何を成し遂げてきたのかを論じるになる.プレンティスは言語学や進化生物学の専門家というわけではないが,ドーキンスやピンカーが推薦文を寄せているというので読んでみたものだ.副題は「How Language Made Us Human」 冒頭には「ウクライナのための序文」がおかれている.これは書脱稿後にロシアウクライナ侵攻が生じたことを受けているもので,(実は書ではその最終章で,言語により世界が平和に向かってきたが,それはなお未完であり,国連の改革が必要であることを論じている)どうして

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  •  「視覚の認知生態学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    視覚の認知生態学―生物たちが見る世界 (種生物学研究) 作者: 種生物学会,牧野崇司,安元暁子出版社/メーカー: 文一総合出版発売日: 2014/11/27メディア: 単行この商品を含むブログ (3件) を見る 種生物学会は学会のシンポジウムのを文一総合出版からシリーズものとして出版しており,書もその一冊.内容的には2009年のシンポジウム「生きものの眼をとおして覗く世界:生理学が支える認知生態学の可能性」が元になっている. 第1章は視覚の基礎知識.光が電磁波であり,視覚とは地上に届く太陽からの電磁波スペクトルの中の一部分を感知しているものであること,電磁波を神経パルスに変えるのはロドプシンであり,それはオプシンとレチナールからなり,オプシンの種類により波長の感受性が異なること,ヒトには青,緑,赤に感受性の高い3種類のオプシンがあり,ヒトの色覚はその感受性の違いを「青ー黄(緑+赤)」

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