――本作は「将棋」が題材とのことですが、書こうと思ったキッカケを教えてください 3時間、もらっていいですか? ――30分でお願いします。 そうですね……まず何より、今回は「熱い」話が書きたかったということがあります。 将棋というのは、静かな部屋の中で、無言で対局者が駒を動かします。スポーツのような激しい動きとは無縁ですし、勝っても叫んだりガッツポーズをしたりするわけじゃない。だから熱さとは無縁のように思われてしまうかもしれませんが、実際は全く逆で、静かに無言で盤に向かうからこそ、内に秘めた闘志は凄まじいものがあります。 また、将棋は麻雀やポーカーなどと違い、運の要素が極めて少なく、しかも全ての情報がプレーヤーに開示されています。にもかかわらず、たった一手で形勢を逆転させる妙手好手の数々が生まれます。それはどういうことかというと、つまり相手の心理の隙を突いていたり、先の先の先まで読むことで相