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ブックマーク / blog.livedoor.jp/route408 (7)

  • マイトトキシン全合成は成るのか : 有機化学美術館・分館

    1月18 マイトトキシン全合成は成るのか カテゴリ:有機化学 今から5年半ほど前、「最後の怪物・マイトトキシン攻略開始」というタイトルの記事を書いたことがあります。マイトトキシンは、分子量3422、環の数が32、不斉炭素の数が98と、生体高分子を除く天然物として最大であり、かつ最強レベルの毒性(タンパク毒を除く)を持った、まさに怪物と称すべき化合物です。その人工的全合成に、何人かの研究者が挑んでいるというお話でした。完成すれば、化学史上に残る金字塔となるのは間違いありません。 マイトトキシン。クリックで拡大 怪物攻略に最も近づいているのは、長らく天然物全合成の第一人者として君臨したK. C. Nicolaou教授です。彼らはすでに、もっと小さなサイズの類縁化合物(といっても十分巨大ですが)であるブレベトキシンA, Bなどの合成に成功しており、これら化合物合成の十分な経験を積んでいます。 ブ

    マイトトキシン全合成は成るのか : 有機化学美術館・分館
  • 作ってはいけない : 有機化学美術館・分館

    8月15 作ってはいけない 有機化学の研究では、非常に数多くの化合物を扱う必要があります。特に製薬企業の研究所などでは、最適な化合物を探索するために、いろいろなパーツを体に結合させて試す、いわゆる「置換基を振る」という作業があり、多くの試薬を扱うことになります。 この際、意外と簡単な化合物なのに、なぜか試薬として市販されていないことがあります。まあしゃあない、これくらい自分で作るか、とうかつに合成するとえらいことになるケースが世の中には存在します。 代表的なのはフェニル酢酸。簡単な構造で、ペニシリンGの置換基にも含まれていたりしますが、これを作ると覚醒剤取締法違反となってしょっぴかれます。これ自身に覚醒剤としての作用はありませんが、アンフェタミンなど合成覚醒剤の原料になるため、製造や所持に厳重な規制がかかっているのです。フェニルアセトンや、フェニルアセトニトリルもこれと同様です。そのわり

  • スライムの青のこと : 有機化学美術館・分館

    12月1 スライムの青のこと さて昨日からツイッターなど眺めておりますと、どうやらこいつが大人気のようであります。 ずどーん。 ドラゴンクエスト発売25周年を記念した、ファミリーマート限定で売っている「スライム肉まん」なのだそうです。実は筆者はドラクエなるものを一度もやったことがなく、この形態を見ても何の感興も呼び起こされないのでありますが、まあかつてやりこんだ方々にはたまらない商品なのでありましょうね。 しかしこの商品、色が普通の肉まんにはあり得ないスカイブルーです。青ってのは基的に欲を失わせる色なんだそうですが、まあこの場合やむなしでしょう。しかしこの色を何で出しているのか、化学者としては気になるところです。青色1号か何かかなと思ったら、「合成着色料を一切使用しておりません」とのことです。天然由来のものってことですね。 青色1号。いかにも人工な構造。 実は生物界にあって、青という色

    スライムの青のこと : 有機化学美術館・分館
  • ホメオパシーのこと(2) : 有機化学美術館・分館

    8月29 ホメオパシーのこと(2) 前回よりの続き。 このようなわけで事件以来ネットでもホメオパシー叩きが盛り上がり、ウィキペディアなどもここのところ記述が急速に先鋭化しつつあるようです。しかしホメオパシーを信奉する人たちに、「学術会議の談話」や「科学的臨床試験の結果」を見せつけ「どうだお前らは間違っている、今すぐその信仰を捨てろ」と迫って効果があるかというと、たぶんそうではないだろうという気がします。 ホメオパシーのなど見てみると、200年の歴史があるだけあって、とうてい虚構と思わせないだけの壮大な体系が構築されていることに驚かされます。また多くの有名人の信奉者を抱え、自然への回帰と薬漬けの現代医療に対する批判という、病に苦しむ人の心を動かす物語をも備えています。治療に使われる各種のレメディも、ハイペリクム(オトギリ草)、メルクリウス(水銀)、アコナイト(トリカブト)、カレンデュラ(キ

    ホメオパシーのこと(2) : 有機化学美術館・分館
  • 雨の匂い : 有機化学美術館・分館

    9月12 雨の匂い 日は筆者の住む関東も久々の雨でした。ということで雨と化学の話でも。 雨が降り出すと、独特の匂いがすることがあります。といっても雨そのものは基的にただの水ですから、匂いは持っていません。また「雨の匂い」も、しばらく降り続くと消えてしまいます。ではあれは何の匂いなのでしょうか? その正体は「ジオスミン」(geosmin、ゲオスミンとも)なのだそうです。「大地」(geo)+「匂い」(smell)から名づけられた化合物です。 ジオスミン 実はこの化合物は、地中に棲んでいる細菌類が作っている化合物で、雨が降ると土中から叩き出されて舞い上がり、あの匂いがするのだそうです。しばらく降るとジオスミンは洗い流され、匂いは消えます。 人間の鼻はこの化合物に対して極めて敏感であり、5ppt空気に含まれているだけでその存在を感じ取れる――のだそうです(Wikipediaより)。5pptとい

    雨の匂い : 有機化学美術館・分館
    oanus
    oanus 2009/09/12
    生物性だったか
  • 血液型を決める分子 : 有機化学美術館・分館

    1月26 血液型を決める分子 カテゴリ:有機化学雑記 昨年のベストセラーランキングは、血液型のが上位を独占したそうです。根拠はない、日だけでしか通じない(最近はアジア圏にも広がりつつあるそうですが)といわれ続ける血液型性格判断ですが、やはり根強いのですね。渾身の力を込めて書いた筆者の(→)はこの100分の1しか売れていないと思うと、なかなか悲しいものがあります。 科学的・統計的に血液型性格判断が当てにならないのは、昔からずいぶん言われていることではあります。最近では 大槻先生のですとか、アルファブロガー小飼弾氏のブログでもずいぶん力説されています。 筆者自身はどうかといいますと、まあむきになって全面否定する気もないけれど、あまり信じる気にはなれないなというところです。理由の一つは、自分自身が最もよい反例だからです。こんなずぼらで面倒くさがりで片付け下手の男がA型であってたまるか、と

    血液型を決める分子 : 有機化学美術館・分館
  • アセトニトリル・クライシス : 有機化学美術館・分館

    1月6 アセトニトリル・クライシス カテゴリ:有機化学雑記 みなさま明けましておめでとうございます。11年目を迎えました有機化学美術館を、年もどうぞよろしく。 さて初っぱなから明るくない話題+若干大げさな題名で恐縮ですが、先日メルマガの方でもちょっと書きました通り、現在重要な溶媒であるアセトニトリルの供給が止まり、在庫なども底をつきつつあるようです。 (アセトニトリル) アセトニトリルは図の通り、わずか6原子から成る非常にシンプルな化合物ですが、融点・沸点が手頃で(それぞれ-45度・82度)、溶解力も強いので溶媒として重要です。DMFやDMSOと並んで、非プロトン性極性溶媒の代表的存在といっていいでしょう。 (N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)) アセトニトリルの供給不足は、現在世界を襲う大不況が主原因のようです。筆者も知らなかったのですが、アセトニ

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