「なにげない」という意味で「なにげに」ということばが使われはじめてからずいぶん経ちます。『岩波国語辞典』では、「1985年ごろから」と年代を明記していますから、もう20年は経ったわけです。 「なにげない」の「ない」が落ちてしまっては、意味が反対になるはずではないか、というのはもっともな理屈です。しかし、現実には、否定の意味を表す「ない」は、しばしばないがしろにされることがあります。 その例がだいぶ集まったので、このへんでまとめておきます。 まずは誤用というべき例ですが、「当店は責任を一切負いかねません」と看板を出す店があります(長崎県、1999年。「まぐまぐVOW」Kouzzyさん報告)。むろん、「負いかねます(=負うことができない)」の意味であり、この場合、「かねる」もしくは「ない」のどちらかの意味が機能していません。私の学生にも、「(ジェットコースターから荷物が)落下された場合において