アラブ首長国連邦(UAE)大統領の異母弟でビジネスマンのイーサー・ビン・ザイド・ナハヤン被告(40)によるリンチ事件で、同国の裁判所は10日、イーサー被告に無罪を言い渡した。詳しい判決理由は示されなかった。政財界の有力者に対し、しばしば“超法規的措置”がとられる湾岸産油国。その延長線上にあるともいえる今回の司法判断について、人権団体などからはさっそく、批判の声が上がっている。(大内清) 「責任能力喪失」 手錠も身体拘束も受けず、固い表情で出廷したイーサー被告は、無罪が言い渡されると、抱擁した弁護士の頭部に口づけをして労をねぎらった。 終始、無言。現地からの報道によると、公判後もメディアに対してノーコメントを貫いた。 「被告は、複数の薬物の投与により、責任能力を喪失した状態だった」 これが、事件を担当したアウダ裁判長が下した判断だった。判決理由の詳しい内容や事件の経緯に関する事実認定につい