細胞内でエネルギーを作り出すミトコンドリアの遺伝子が母親だけから子に受け継がれるのは、精子由来の父性ミトコンドリアが「オートファジー(自食作用)」と呼ぶ現象によって細胞内で分解されるためだとする研究結果を群馬大の佐藤健教授と妻の美由紀助教(ともに細胞生物学)夫妻がまとめ、14日、米科学誌「サイエンス」(電子版)に発表した。 人類の進化に関する学説として、ミトコンドリア遺伝子から祖先をたどると数十万年前のアフリカの女性に行き着くという「ミトコンドリア・イブ説」が知られている。しかし、ミトコンドリアの母性遺伝の仕組みは解明されていなかった。 佐藤教授によると、実験には、土の中に生息する体長約1ミリの透明な生物「線虫」を使った。細胞機能がヒトと同じためで、正常な線虫の受精卵と、遺伝子操作でオートファジー機能を持たないようにした線虫(欠損線虫)の受精卵を比べた。その結果、欠損線虫からは父性ミトコン