作家の島田荘司さん(60)が、ミステリーへの功績をたたえる第12回日本ミステリー文学大賞を受賞した。1981年に『占星術殺人事件』でデビュー後、本格推理をリードしてきたが、これまで賞とは無縁で、「無冠の帝王」と呼ばれるほど。授賞式のあいさつでは、この賞の受賞を当初固辞した理由を説明した。 「今も新人発掘に力を入れ、各分野の第一線で活躍された高齢者に、本格ミステリーの書き手になって欲しい。でも私が権威になっては新人にとって敷居が高くなる」。受賞の電話連絡にも「次点の方に譲っては」と答えたが、選考委員の逢坂剛さん、森村誠一さんに矢継ぎ早に説得され、折れたという。 最後には、「今は受賞を光栄に思う。でも、私の精神は、デビュー作を書き上げたころと変わらず、権威やお偉方にはならない」と、初々しい決意を表明した。 (2009年5月7日 読売新聞)