異例づくめの学園漫画『鈴木先生』の秘密! 過剰な描線に過剰なセリフ量。漫画『鈴木先生』の登場人物はだれもが過剰に発言し、ときには過剰な自意識からあえなく自滅してしまいます。その姿はあまりに滑稽で、読者はもう笑うしかありません。しかし『鈴木先生』はギャグマンガではありません。「濃密で濃密で、そしてリアル」と町山さんもその描写のうまさを賞賛する、文芸漫画の流れを脈々と受けついだ「考える漫画」なのです。セックスや避妊、そして良識ある少数と大衆の問題など、中学生活を描きながら、実際その問題意識は、世代を超えた普遍的なところを狙っています。ポジティブ信仰の学園漫画が氾濫する中で、町山さんが『鈴木先生』に見た「ダークなもの」とはいったい何なのか。ドストエフスキーやオルテガ、果ては映画『ハイスクール白書』まで動員して、その魅力を、奥の奥までさぐります。 ■1.鈴木先生はデビルマン? 五年間の連載で、劇中