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ブックマーク / outsideintokyo.jp (38)

  • OUTSIDE IN TOKYO / エヴァ・ヴィティヤ『パトリシア・ハイスミスに恋して』インタヴュー

    パトリシア・ハイスミスは長編第1作の『見知らぬ乗客』(1950)がヒッチコックによって映画化(1951)、第3作の映画化『太陽がいっぱい』(1955/ルネ・クレマン)が大ヒット(1960)し、一躍人気作家の仲間入りを果たした。『パトリシア・ハイスミスに恋して』は、ハイスミスと親密な関係にあった人物と彼女の親類へのアプローチを経て、まさに“映画的”とも言える人生を送った彼女の創作と人生の秘密に迫った作品である。 かつてスーザン・ソンタグは、作り手と作品は別のものであり、私は作品のみを評価すると語った(『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』(2020)で引用されたトーク番組の抜粋映像)が、作品の作り手である作者がどのような人物であるのかを知ることは、昨今、重要度が増しているように思える。こうした傾向は、インターネットを通じた情報の浸透によって、作品における虚構性の濃淡が否応なしに透けて見え

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    okbc99 2023/11/07
  • OUTSIDE IN TOKYO / タラ・ウッド『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』レビュー

    クエンティン・タランティーノが『レザボア・ドッグス』(1992)でカンヌ国際映画祭を沸かせ、一躍スター監督の仲間入りをしてから、早くも30年という歳月が経つ。タランティーノはこの30年間で9の長編映画(『パルプ・フィクション』(1994)、『ジャッキー・ブラウン』(1998)、『キル・ビル』(2003)、『キル・ビル2』(2004)、『デス・プルーフinグラインドハウス』(2007)、『イングロリアス・バスターズ』(2009)、『ジャンゴ 繋がれざる者』(2013)、『ヘイトフル・エイト』(2018)、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)、『キル・ビル』2部作を1作と見なしている)を撮っている。30年間で9というと、それほど多いようには思えないかもしれないが、スクリーンから伝わってくるひとつひとつの作品に注ぎ込まれた熱量の総量は圧倒的だ。30年という歳月が経過し

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    okbc99 2023/09/04
  • OUTSIDE IN TOKYO / アダム・グジンスキ『メモリーズ・オブ・サマー』インタヴュー

    1970年代末、緑が繁茂するポーランドの田舎町で、12歳の主人公ピョトレック(マックス・ヤスチシェンブスキ)は、父親(ロベルト・ヴィェンツキュヴィィチ)が外国に出稼ぎに出て不在となった夏休みを過ごしていた。慕っている父は居ないとはいえ、ピョトレックは最愛の母ヴィシア(ウルシェラ・グラボフスカ)とふたりきりで、自転車で湖まで疾走し、好きなだけ泳いでは水辺に寝転び、家では得意のチェスに興じる、幸福な時間を過ごしていた。しかし、北国ポーランドの短い夏と同様に、幸せな時間は長くは続かなかった。母ヴィシアが夜になると同僚の男に誘われ外出するようになるのだ。ピョトレックは、母親に裏切られたという気持ちを抱き始める。そこへ、ピョトレックと同じ年頃の少女マイカ(パウリナ・アンギュルチク)が都会から母親に連れられてやってきた。「こんなところ、退屈で死にそう」と言ってニコリともしないマイカにピョトレックは惹か

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    okbc99 2019/06/12
  • OUTSIDE IN TOKYO / ギヨーム・セネズ『パパは奮闘中!』インタヴュー

    主人公のオリヴェエ(ロマン・デュリス)は、オンライン販売会社の巨大倉庫でリーダーとして働き、職場の仲間からの信頼も厚い、労働組合でも責任ある立場を担い、忙しい日々を過ごしている。家庭を任されたのローラ(ルーシー・ドゥベイ)はショップ店員として働き、家計を支えながら、二人の幼い子供たちの面倒を見ている。子供たちと接するローラの様子には愛らしささえ窺え、小さな子供が育まれる家庭は、ロマン・デュリスが父親を演じていることもあって、順風満帆に見えるのだが、何かがおかしい。職場の年配の同僚が、クビを告げられ、自ら命を絶ってしまうのだ。映画は、21世紀の私たち、労働者が置かれている状況を何一つ誇張することなく描いている。見るほどに身につまされる、まさに私たちの周囲で起きている現実、そのものを描いている映画である。 グローバル時代の過酷な競争に晒された職場では、年老いて生産効率が落ちてきた労働者は解雇

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    okbc99 2019/04/25
  • OUTSIDE IN TOKYO / カルラ・シモン『悲しみに、こんにちは』インタヴュー

    主人公は母親を亡くした少女のフリダ(ライラ・アルティガス)、母親と共に住んでいたバルセロナの家を離れて、叔母マルガ(ブルーナ・クシ)と叔父エステバ(ダビ・ベルダゲル)が、一人娘アナ(パウラ・ロブレス)と住む、盛夏の緑豊かなカタルーニャの山腹に建つ一軒家へと預けられるところから映画は始まる。バルセロナの都会から、カタルーニャの田舎に引っ越したフリダにとって、目に入るものの全てが新鮮で奇異に写る。そうした新世界を目撃するフリダの生々しい表情を捉えた映像が素晴らしい。 何故、母親が急にいなくなってしまったのかも理解できず、実子であるアナに微妙なライバル心を燃やしながら、突如降り掛かってきた人生の”悲劇”と”ミステリー”に戸惑いながらも小さな体で向き合っていくしかない少女フリダが置かれた境遇の複雑さもさることながら、そんな少女の存在を家族全体で受けとめることになった、若い夫婦にとっても事態は容易で

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    okbc99 2018/07/28
  • OUTSIDE IN TOKYO / アベル&ゴードン『ロスト・イン・パリ』インタヴュー

    あのフランス映画社のバウ・シリーズ35周年記念作品として2010年に劇場公開された『アイスバーグ!』(05)、『ルンバ!』(08)が映画ファンの間で熱い支持を受けたアベル&ゴードンが、新作『ロスト・イン・パリ』を携えて来日し、元気な姿を見せてくれた。カナダの田舎町から、アーティストである叔母が暮らす街パリを目指してやってきた主人公フォオナの珍道中を、スタイリッシュな映像美と道化師由来の見事な身体芸で楽しませてくれる『ロスト・イン・パリ』は、今現在、彼らの最新作だが、その前の作品、2011年カンヌ国際映画祭の監督週間で上映され40カ国以上で公開されて好評を博した『La Fee/ The Fairy』が中々の傑作で、Youtubeに全編が掲載(https://www.youtube.com/watch?v=chPzieJXu4U)されているので、ご興味のある向きは是非ご覧になることをお薦めした

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    okbc99 2017/08/02
  • OUTSIDE IN TOKYO / 瀬田なつき『PARKS パークス』インタヴュー

    瀬田なつき監督が、橋愛を主演に迎えて、井の頭公園100周年記念の映画を撮る、エグゼクティブ・プロデューサーがboidの樋口泰人氏、プロデューサーが『カナリア』(04)や『岸辺の旅』(15)を手掛けた松田広子氏との知らせを聞いて、期待は高まるばかりだったが、律儀に、井の頭公園開園100周年を迎える5月の桜の季節に公開を間に合わせてきた編をついに見ることが出来て、とても幸せな気分に包まれたことをまずは最初に告白しておく。 個人的に、井の頭公園は母親の実家からほど近い距離にあることもあって、子供の頃に頻繁に遊びいった愛着の深い場所であるし、吉祥寺も自分にとって特別に思い入れの深い街だということもある。つい先日ツイッターのタイムライン上を流れてきた保坂和志氏の言葉とされるbotのツイート「人間は「個」として完結しているわけではなくて、いろいろなことを場所・時間・物に預けて、それらの力を借りて呼

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    okbc99 2017/05/01
  • OUTSIDE IN TOKYO / ケン・ローチ『わたしは、ダニエル・ブレイク』オフィシャル・インタヴュー

    名匠ケン・ローチ監督に2度目のカンヌ国際映画祭パルムドールの栄誉をもたらし、国イギリスでもヒットを記録した『わたしは、ダニエル・ブレイク』には、監督デヴュー作『キャッシー・カム・ホーム』(66)以来、50年の長きに亘ってケン・ローチが寄り添ってきた市井の人々を描くリアリズムが力強く息づいており、人々の生活を支えるはずの社会制度の機能不全と為政者の不作為(悪意)に怒りを滾らせ、見るものに生々しい感情を呼び起こす。今まさに、多くの”民主主義国家”で必要とされている映画である。 主人公である熟練の大工ダニエル・ブレイク(デイブ・ジョーンズ)は、ある日、心臓の発作を起こし、仕事中に足場から落ちてしまう。医者からドクターストップが掛かったダニエルは、休職中の手当を受け取るべく役所へ行くが、そこで思わぬ壁に打ち当たる。マニュアル通りの対応しか出来ない役所の人間の融通の効かなさに呆れ果てた後に辿り着い

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    okbc99 2017/03/21
  • OUTSIDE IN TOKYO / ルキーノ・ヴィスコンティ 『家族の肖像』レビュー

    ルキーノ・ヴィスコンティ、晩年の傑作『家族の肖像』(74)が、1978年の日初公開から39年を経た今、デジタル修復の作業を経て、より鮮やかな色彩を帯びてスクリーンに甦った。ローマの瀟洒なアパートメントで「家族の肖像画(カンバセーション・ピース/conversation piece)」に囲まれて静かに暮らす主人公の老教授をバート・ランカスターが演じ、FENDIの毛皮を颯爽と纏い教授の生活に闖入する伯爵夫人をシルヴァーナ・マンガーノ、ヴィスコンティの公私に渡る寵愛を受けたヘルムート・バーガーがサンローランの衣装を纏い伯爵夫人の燕コンラッドを演じている。そして、教授が住まう"部屋"と、偽ローマの風景を見渡す魔術的なテラスを造り上げたマリオ・ガルブリアの美術とダリオ・シモーニのセットデザイン、長年に亘ってヴィスコンティ作品を手掛けたピエロ・トージの衣装デザインに至るまで、映画を構成する人物と事物

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    okbc99 2017/02/16
  • OUTSIDE IN TOKYO / マーティン・スコセッシ『沈黙 –サイレンス–』来日記者会見全文掲載

    Q:原作を読んでから映画化まで28年を要したということですが、その間に映画化への情熱というのは高かったり低かったり色々曲線があったと思います。映画化への情熱が非常に高い時にタイミングが合わなくて出来なかったということもあったと思われますが、実際そうだったのでしょうか?それと、もしもっと若い時期に映画化をされていたら今と違った作品になっていたでしょうか? マーティン・スコセッシ:そうですね、若い頃に撮っていたら全然違う作品になっていたでしょう。漸くちゃんと脚として構成して書いて、映画化に挑戦してもいいかもしれないと気で思うようになったのは、『ギャング・オブ・ニューヨーク』を撮っていた2003年頃なんです。それまでは映画化権は持っていたものですからその権利は失いたくなく、なかなか書けてないんだけれども権利元にはもう出来てるからなんて言って、待たせていたわけですけれども、その結果、イタリアの

    OUTSIDE IN TOKYO / マーティン・スコセッシ『沈黙 –サイレンス–』来日記者会見全文掲載
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    okbc99 2017/01/22
    “そして、あなたに差し上げたい本がある、この小説は信ずることとは何なのかということを問うている作品です、と言って、小説「沈黙」を私にくれたのです。”
  • OUTSIDE IN TOKYO / マーティン・スコセッシ『沈黙 –サイレンス–』来日記者会見全文掲載

    小説「沈黙」において、遠藤周作は2つの”沈黙”について描いている。ひとつは、人間の問い掛けに対する”神の沈黙”だ。この”神の沈黙”についてマーティン・スコセッシは、ハリウッド大作映画的なスペクタクルを排し、溝口健二の古典映画へのオマージュを捧げながら、日という風土と信仰を巡る音と声による対話を通じて、人間の精神世界の深みへと至る映画的な洞察を行っている。 もうひとつの”沈黙”については、遠藤周作による「「沈黙」についての取材報告(田中千禾夫)」とも言うべき「切支丹の里」から一節を引用する。 「切支丹学者たちはこの時代の事実考証や文化史的な意味については多くの努力を払ってはいるが、私がこの時代から何よりも知りたい「日人と基督教」「基督教は当に日の風土に根をおろしたか」「強者と弱者」といった問題は全くといっていいほど語られていないのであった。 ~略~ 弱者たちは政治家からも歴史家からも

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    okbc99 2017/01/22
  • OUTSIDE IN TOKYO / ルカ・グァダニーノ『胸騒ぎのシチリア』インタヴュー

    ティルダ・スウィントンと4度目のコラボレーション(『The Protagonists』(99),『Tilda Swinton: The Love Factory』(02),『ミラノ、愛に生きる』(09)))を果たしたルカ・グァダニーノ監督の新作『胸騒ぎのシチリア』は、原案となった、アラン・ドロン、ロミー・シュナイダー競演の『太陽が知っている』(69)が湛える倒錯的な艶かしさと、その時代が持ち得た犯罪の気配を、21世紀南イタリアの照りつける太陽の下で脱白し、男女4人の欲望を民主的な手捌きで明け透けに描きだす、サスペンス仕立ての群像劇である。 声を失ったロック・ミュージシャン、マリアン(ティルダ・スウィントン)と若い撮影監督ポール(マティアス・スーナールツ )が、俗世間から隔絶した瀟洒なヴィラで親密なオフの時間を過ごしている処に、その静寂を打ち破るように、エネルギーの固まりのような厚かましい男

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    okbc99 2016/11/26
  • OUTSIDE IN TOKYO / イエジー・スコリモフスキ『イレブン・ミニッツ』インタヴュー

    ポーランド出身の映画作家イエジー・スコリモフスキは、母国で撮った『身分証明書』(64)、『不戦勝』(65)、『バリエラ』(66/※1)で頭角を表し、ジャン=ピエール・レオを主演に迎えた『出発』(67)はベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞、ジャン=リュック・ゴダールは『出発』を“ポーランド的でやぶれかぶれな映画”(※2)と“羨望と親愛の情を込めて”高く評価したという。“ポーランドのゴダール”とも呼ばれたスコリモフスキの作品に対するゴダールの評価をそのように伝えた山田宏一は、1972年の洋画ベストにて、『早春』(70)をドン・シーゲル『ダーティーハリー』(71)、ベルトルッチ『暗殺の森』(71)を差し置いて、堂々1位に選出している。 順風満帆に見えたスコリモフスキのキャリアだが、『手を挙げろ!』(67)が祖国ポーランドで上映禁止を喰らい、その後、約10年間に亘ってチェコスロヴァキア、ベルギー、ス

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    okbc99 2016/08/29
  • OUTSIDE IN TOKYO / イエジー・スコリモフスキ『イレブン・ミニッツ』インタヴュー

    OIT:監督の絵画作品がホテルの部屋のシーンで使われていましたね。これは以前、監督が来日された時に頂戴した、ヨーロッパで展覧会を行われた時のカタログ(jerzy skolimowski paintings 2008-2005)なのですが、まだ日では絵画作品の展覧会を行ったことがないというお話を伺って、私の知り合いのギャラリストに相談するに当たって、カタログを一部頂いていたのです。その時は結局、作品がとても大きいので、運送費や保険など、コスト面を考えると難しいのではないか、ということで話は進まなかったのです。それで今回、スクリーンの中で、新作かな?と思って拝見したのですが。鳥の白いシルエットの作品とか。

    OUTSIDE IN TOKYO / イエジー・スコリモフスキ『イレブン・ミニッツ』インタヴュー
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    okbc99 2016/08/29
    “まあ、ぶっちゃけて言ってしまえば、犬を連れた女の子がいるだろう?彼女を助けたいと思ったのは、あの犬が私の飼い犬だからなんだ(笑)”
  • OUTSIDE IN TOKYO 今週のおすすめ映画 『チャイナ・ゲイト』サミュエル・フラー

    「この映画をフランスに捧げる」という献辞から始まる、サミュエル・フラー、1957年の作品『チャイナ・ゲイト』は、「300年以上前にフランスの宣教師たちが訪れて以来、フランス植民地下のインドシナは、アジア有数の稲作地帯として栄えていた。しかし、その繁栄は、1941年、日軍の進駐を機に一変した。1954年、日が降伏すると、インドシナの革命家ホー・チ・ミンが中国共産党の力を借りてベトナムを掌握、北部でベトナム独立同盟会(ベトミン)を組織した。朝鮮戦争の終結後、フランス軍は、共産主義のアジア侵略を防ぐために戦線を張る。北アフリカから呼び寄せた外国人傭兵部隊の仕事は、モスクワから調達される武器の遮断である、兵器は中国門(チャイナ・ゲイト)近辺の山中に隠されていた。ここに貯蔵された爆薬で共産党は北部の村を爆撃していたのだ。チャイナ・ゲイトから160キロの距離にあるサントイという村が最後の砦だ。物資

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    okbc99 2016/02/27
  • OUTSIDE IN TOKYO / 〜Labor of Love、愛で作られた作品〜 ケイト・ブランシェット『キャロル』ジャパン・プレミア

    2016年1月22日、六木ヒルズの巨大スクリーン、スクリーン7で行われた『キャロル』ジャパン・プレミアに、今、ハリウッドでも最も輝いている女優ケイト・ブランシェットが来日、日からは、国際映画祭での受賞経歴を持つ女優寺島しのぶが応援に駆けつけ、舞台挨拶に華を添えた。 定刻通り、ケイト・ブランシェットの登場を司会のクリス・ペスラーが告げると、ジョー・スタッフォードの「No Other Love」が会場の空気を揺らし、ブランシェットが客席左奥の通路から現れる。満員の観客で埋め尽くされた客席中央を横切る通路に敷かれたレッドカーペットを踏みしめて歩く彼女は、幾つかのサインに応じてから、満員の客席の中央附近でその歩みを止めると、落ち着いた物腰で手を腰に置き、観客に視線を返す余裕を見せる。目映いばかりのスポットライトを浴びる彼女の立ち姿は、時代錯誤を承知でつい、見る者に“神々しい”と呟かせてしまうほ

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    okbc99 2016/02/06
  • OUTSIDE IN TOKYO 今週のおすすめ映画 『ディーン、君がいた瞬間』アントン・コービン

    "伝説"になる直前のジェームス・ディーンと野心に満ちた新進写真家デニス・ストック、二人の若者に与えられた限られた出会いの時間を通じて、写真家が、如何にして人の人生(原題:Life)のささやかな瞬間を"特別な瞬間"に凝縮することに腐心しているかということを、ポートレート写真家としての名声を欲しいままにしたアントン・コービンが、自らの体験を投影したかのような親密さで描き出した。 ジェームス・ディーンを演じるデイン・デハーンは、ジェームス・ディーンの体型に似せるべく、体重を増やして役作りをしたという。個人的には、その結果いささか丸顔になった貌つきと、如何にもディーンらしい独特の喋り方の物真似に些か不安感を感じながら映画を見始めたが、そうした表面的な引っかかりは、映画を見ている内に気にならなくなった。それはこの作品が湛えるパーソナルな佇まいに次第に惹き付けられ、"デイン・デハーンが演じるジェームス

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    okbc99 2015/12/24
  • OUTSIDE IN TOKYO / オリヴィエ・アサイヤス『アクトレス 〜女たちの舞台〜』インタヴュー

    オリヴィエ・アサイヤス監督の新作『アクトレス 〜女たちの舞台〜』(原題:Sils Maria)には、『イルマ・ヴェップ』(96)、『感傷的な運命』(00)、『デーモンラヴァー』(02)、『クリーン』(04)、『NOISE』(05)、『夏時間の庭』(08)といったアサイヤス作品の特権的瞬間の全てが詰まっている、現時点における監督の最高傑作であると言って良いだろう。 奇しくも、こちらもジュリエット・ビノシュが主演した、アッバス・キアロスタミの『トスカーナの贋作』(10)における虚実ないまぜの会話劇、ローマン・ポランスキーの『毛皮のビーナス』(13)における演劇的虚構の現実への浸、かつて、ジャン・エプシュタインやジャン・グレミヨン、そして、まさしく、アーノルド・ファンクが捉えた、山々や雲の”時”を超える自然、そうした豊かな映画的光景と舞台設定の中で、ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワ

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    okbc99 2015/10/25
  • OUTSIDE IN TOKYO / フェルザン・オズペテク 『カプチーノはお熱いうちに』レビュー

    激しい雨が降りつける中、雨宿りを兼ねてバスの停留所に駆け込む人々の足元を長廻しで捉えるオープニング・ショットを、先ずはキャメラワークに注目せよとの目配せを察知しつつ眺めていると、案の定、エレナ(カシア・スムトゥニアク)とアントニオ(フランチェスコ・アルカ)の秀逸な出会いのエピソードに続いて、エレナがカフェ・タランチュラで活き活きと働く、躍動感溢れる日常の一コマを流線型のキャメラワークで見事に描き出す計算し尽くされた長尺のワンショットに出くわし、一気に映画に引き込まれる。 映画の舞台は、フェルザン・オズペテク監督2010年の作品『あしたのパスタはアルデンテ』と同じ、アドリア海に面した南イタリアの街レッチェである。主人公のエレナは、裕福な家の子息であるジョルジュ(フランチェスコ・シャンナ)、ゲイの友達ファビオ(フィリッポ・シッキターノ)、身持ちの軽いシルヴィア(カロリーナ・クレシェンティーニ)

    OUTSIDE IN TOKYO / フェルザン・オズペテク 『カプチーノはお熱いうちに』レビュー
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    okbc99 2015/09/27
  • OUTSIDE IN TOKYO / コスタ=ガヴラス『西のエデン』インタヴュー

    左翼系政治家の死の真相に迫りながら陰謀に巻き込まれる判事を描き、ジャン・ルイ・トランティニャン、イヴ・モンタンが演じた『Z』(69年)など、政治陰謀や運動など社会的テーマを扱うことの多いフランス在住のギリシャ人監督のコスタ=ガヴラスは、『ミッシング』(84年)でカンヌ国際映画祭でパルムドール、『ミュージック・ボックス』(89年)でベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞した巨匠の一人だ。アメリカやフランスを拠点に硬派な社会派ドラマを撮りながら、サスペンスやエンターテイメントの要素を忘れない彼だが、名前よりも作品の方が知られているかもしれない。昨年は彼の娘ジュリー・ガヴラスも『ぜんぶ、フィデルのせい』を発表している。そんな彼の新作『西のエデン』がフランス映画祭で上映された。ヨーロッパを目指して船に乗り込んだ不法移民のエリアスは、エデンという名のリゾートに上陸し、ギリシャからパリまでの道のりを、言葉が

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    okbc99 2015/09/10
    “こうした移民の到来という動きが今だけのことではないことを見せるためです。今後ますます増えていくでしょうし、少なくとも今後10年くらいは、この動きはますます盛んになるだろうと思ったからです。”